作品タイトル不明
70「いざ水無月家じゃね?」
夕食の片付けを終え、歯磨きを終えた夏樹たちは各自お風呂セットを持って水無月家に向かった。
「――ようこそおいでくださいました。この度は、水無月家のためにご足労くださり御礼申し上げます」
出迎えたのは、水無月家当主水無月茅だ。
彼女の背後には、秘書である八咫柊が控えている。
「構わないさ。ただ、俺はその辺にいる木端魔族だと思って接してくれや」
「それは無理があるでしょー」
救援要請を受けたサタンが、あくまでも魔王サタンではなく一介の魔族ですと主張するが、さすがにそれは無理だと夏樹は思う。
この面々の中で一番強いのは誰か、と問われればサタンという答えしかない。
夏樹だって強いが、魔王サタンほどではない。
それなりに戦えるだろうが、夏樹には魔王サタンの底が見えないのだ。
せめて肉体面で成長し、星槍の力をもっと使いこなせるようになるまで敗北は必須だろう。
「魔王が堂々と魔王名乗って動くのはやばいんだって」
「じゃあ、魔界帰ってお仕事しなよ!」
「魔王としてそれはできない!」
「意味わかんなーい!」
気づけば由良家に主夫気取りで住み着いてしまった魔王の癖に、と夏樹は抗議した。
「あ、水無月さん、この人たちはいつもこんな感じなんで、お話を進めていただければ幸いっす!」
「は、はい。では、こちらに」
この場には鋭いツッコミをしてくれる七森千手はいない。
銀子たちは連れてくればよかったとすでに後悔している。
「……あれ? 小梅さん、どうしたっすか? 早く中に入りましょうよ? あ、着替えのパンツ忘れちゃったっすか?」
「忘れとらんわい! いや、そうじゃなくてのう……なんじゃか、屋敷の中から悍ましいなにかを感じるんじゃが」
「仮にも照子ちゃんがいた水無月家に悍ましい何かって、なんすか?」
「それがわからんから二の足を踏んどるんじゃ。怖いとかではなくて、関わりたくない、面倒じゃ、と魂が叫んどる」
「なんすか、それ」
「嫌な予感がするんじゃよ。屋敷の奥から感じる力もどこかで感じたことがあるようなないような……そもそもクソ親父がわざわざ自分から出張る時点でなんか訳ありじゃろう!」
「そうっすねぇ。でも、このまま帰りますとは言えないっすよねぇ」
「そうじゃのう。しゃーない、最悪異世界帰りのバーサーカー夏樹に大暴れしてもらえばええじゃろう」
「それだと水無月家が更地になってしまうと思うっす」
「クソ親父のポケットマネーでなんとかなるじゃろう!」
何か水無月家から感じる嫌な気配に尻込みしていた小梅だったが、夏樹たちがみんな水無月家の門を潜ったので慌てて追いかけた。