作品タイトル不明
71「新たな天使じゃね?」①
水無月家の廊下を歩き、夏樹は先頭を歩く茅に尋ねる。
「当主さん、なにかあったんですか? バトル? バトル展開?」
「いえ、戦いをお願いしたいわけではございません」
「……そうなんだ」
少し落ち込む夏樹に、一登がなんとも言えない顔をした。
「夏樹くんさ、なんでしょんぼりしているの?」
「俺って勇者じゃなくてバーサーカーだったからバーサーカーとして生きようかなって」
「無理してバーサーカーにならなくていいからね。ありのままの夏樹くんでいてよ」
「――一登きゅん。え、なにこの胸のときめき、これが……幼馴染への親愛?」
「ありがとう、でも一登きゅんはやめてね。夏樹くんに言われるとちょっと恥ずかしい」
夏樹と一登のやりとりに、茅と柊がくすりと微笑み、義政が「青春ですね」と頷く。
「夏樹、一登、なんていうか、実を言うと呼ばれたのは俺だけなんだ」
「そうなの?」
「だが、ちょっと不安があってな。お前さんたちが来てくれたから助かるっていうか、頼もしいっていうか」
「よくわからないけど、任せてよ! 星槍さん不在だけど、負ける気はしねぇ!」
「俺もサタンさんにはお世話になっているので、できることなら頑張ります」
「僕もお力になれれば、幸いです」
「義政先生がいれば、殺人事件が起きても問題ないさ!」
「夏樹くん……殺人事件が起きた時点で大問題だよ!」
どこか暗い雰囲気のサタンに、夏樹たちが明るく振る舞ってみるも、彼は元気なく笑うだけ。
水無月家に彼にとっての何があるのか、気になる。
そして、気づいた。
「――あれ?」
夏樹は水無月家の奥にある、温泉の方から小梅に近い力を感じ取った。
天照大神の力の残滓によってわからなかったが、つい小梅が背後にいることを確認してしまうほど、よく似た力だった。
「なんじゃ?」
「いや、なんか、あれ? 小梅ちゃん、分身の術とか使えないよね?」
「なんでじゃ!? 俺様が忍者なわけないじゃろうて!」
「だよねぇ。小梅ちゃんが河童忍者かと疑いかけちゃったよ」
「河童忍者ってなんじゃ!?」
河童勇者に続く河童忍者という言葉に、小梅が叫んだ。
だが、すぐに人の家だと思い出し口を噤む。
「河童忍者に関しては今度ね。どこに河童忍者の耳があるかわからないから」
「なん、じゃと」
「それよりも、茅さん。奥にいるのって、天使じゃね?」
夏樹が口にした疑問に、茅が首肯するとサタンが気まずそうに言う。
「俺もどういう経緯でこうなったのかいまいちよくわからないんだが、向島市の新たな土地神は――俺の娘ルシファー・花子だ」
「………………」
沈黙が走る。
すると、小梅が鬼の形相をしてサタンの襟首を掴んだ。
「おどれ、隠し子がおったんか!」
「隠してないからね!? 小梅ちゃんのお姉ちゃんの花子だよ!?」
「俺様に姉などおらん!」
「嘘ぉ!?」
「あ、なんか面倒臭いイベントの予感がする!」