作品タイトル不明
69「今日イベント多くね?」②
追加で大皿二枚分の餃子を焼き終えたサタンが、エプロンを外してテーブルの前に座る。
銀子から渡されたビールを礼を言って受け取ると、プルタブを開けておいしそうに飲んだ。
「んで、サタンさん。次のファンタジーはどんなファンタジーなの?」
「さっきの電話は、水無月家の雲海ばあちゃんからなんだが」
「どうして! 水無月家の雲海おばあちゃんが! 魔王サタンと連絡先交換してるのよ!?」
「待て待て、最初はスーパーで食材探し中に助けてもらったのがきっかけでな。あとでお互いに立場を知ってびっくりしたもんだぜ」
「びっくりしたのは雲海おばあちゃんの方だと思うけどなぁ。親切で声をかけたら魔王サタンでしたって、ファンタジーだよ!」
きっと雲海もサタンの正体を知ってさぞ頭を抱えたに違いない。
「俺はオフで向島市にいることを伝えたら受け入れてくれたぞ」
「嘘っ、雲海おばあちゃんちょっと柔軟すぎね?」
思い返せばアグレッシブなおばあちゃんだったことを思い出した。
大型バイク乗ったり、神だろうと叱り飛ばしたりできる雲海ならば、サタン相手でも動じないのかもしれない。
サタンがフレンドリーすぎるというのもあるだろう。
魔族の頂点とは思えないほど気さくで友好的だ。
まだ夏樹はサタンの魔王らしい一面をしっかりと見たことはない。
想像を絶する恐ろしさなのか、それともこのまま変わらず飄々としているのか、興味がないと言えば嘘になる。
「んで、雲海ばあちゃんがどうしたつーんじゃ?」
「天照大神がお役目のために水無月家から去っただろう?」
「え?」
「嘘?」
夏樹と一登、そして祐介も箸を止めて驚く。
一登に至っては箸を落としてしまうほどだ。
「あとで伝えようと思っとったんじゃが、天照大神は新たな神々のボスを封じるために封印に加わったんじゃ。アポローンの奴だけじゃ少々力不足らしい」
「……マジで?」
「マジじゃ」
夏樹はアポローンと一度会っているが、その際に底知れぬ力を感じ取っている。
あのアポローンと、天照大神が揃って封印するほどの神なのか、と絶句した。
「待って待って、殺す、じゃなくて封じるの?」
「そうらしいのぅ。緩やかに力は削いでいるのでいずれは殺せるようだが、時間はかかるようじゃ。ぶっちゃけガチバトルすると、世界を守りたい天照大神たちに対し、新たな神々はそんなもんしったこっちゃないと攻撃してくるらしい。守りながら戦える相手じゃないんじゃろう。ならば、時間をかけて殺せるならそちらの方がええじゃろうな」
「……照子ちゃん」
夏樹は、小梅の説明に一応は納得したが、一登としては親しい友人が何も言わずに去ってしまったのだ、思うことはあるだろう。
「一登くん。あまり気にしないでほしいっす。照子ちゃんも仲がいい一登くんにどんな顔をすればいいのかわからなかったすよ。それに、私や一登くんがヨボヨボになる前には帰ってこられるそうなので、また会えるっすよ」
「……うん。ありがとう、俺、頑張って長生きします」
少し泣きそうな顔をした一登だったが、鼻を啜って耐えた。
「一応、言っておくが、夏樹」
「うん?」
サタンがビールを飲み干して夏樹に忠告した。
「太陽の神と戦おうと思うなよ。今のお前さんだと瞬殺だし、そもそも刺激しようものなら俺は殺してでも止めなきゃならねえからな」
「サタンさんは俺を何だと思ってるの!? そんなバーサーカーみたいに誰構わず攻撃したりしないよ! 興味もないし! どこにいるかもわからないし!」
「……なんだか、不安なんだよなぁ。新たな神々にちょっかいかけられてうざくなったらボス潰せばいいとか思いそうだし」
「そりゃ思うんだろうけどさ!」
「素直だな! だから忠告しているんだよ!」
「なるほどね! 俺、バーサーカーだったわ!」
夏樹は、自分が割とバーサーカーなことを自覚してしまった。