作品タイトル不明
66「妹が魔法少女とか意味わからなくね!?」③
「お兄ちゃんに取り憑く妖怪め……灼熱の魔法少女マジカルひなるんが退治してあげる!」
「ひなた、いい加減にするんだ!」
「どいて、お兄ちゃん!」
祐介の声はひなたに届かない。
どうしても、ソーニャを倒そうとする考えは変わらないようだ。
「祐介、守ってくれてありがとう。私に任せてくれ」
「……ソーニャたん、でも」
「守ってくれるのはとても嬉しいんだけど、兄と妹を戦わせる趣味はないから」
ソーニャが前に出る。
パジャマから祐介のハーフパンツとTシャツに着替えると、窓の外を指差した。
「せっかくの素敵なお家を壊したくないから外で戦おうぜ」
「ぎりっ、お兄ちゃんの服をさも自分のもののように……ダークサイドに堕ちそう」
「……ちゃんと祐介の妹だな。ちょと安心したぞ」
ひなたの言動が祐介に似ていることに苦笑したソーニャは、窓から外に飛び出す。
「待って!」
「いやいやいやいやいや、どうしてバトル!? 初夜は!?」
祐介も追いかけた。
しばらくしてソーニャは河川敷で足を止めた。
ひなたと祐介が追いつくと、川辺できゅうりを食べていた河童さんが魔法少女の登場にぎょっとする。
「戦うなら、ここで存分にやってあげる」
「――いい度胸だね」
「それはこっちの台詞だから。私は、ソーニャ・シラー。異世界の魔王ギーゼラ・シラーの母親だからね!」
「……………母、親?」
魔力を高ぶらせていたひなたの勢いが止まると、ソーニャと祐介の顔を交互に見る。
ひなたをファンタジーに関わらせたくない家族の総意で、隠し事をしている以上、外見が幼いソーニャに娘どころか孫もいることはもちろん言っていなかった。
「孫もいるぞ!」
「――ま、ご?」
「ラーラという。可愛い子だ」
「なんじゃそりゃぁあああああああああああああああああああああ!」
ひなたは叫んだ。
よほど力をこめた叫びだったのだろう。
彼女の魔力が炎になって吹き荒れる。
「お兄ちゃん!」
「はい!」
「人外好きだけでもちょっとやばいのに、子持ち孫持ちのロリババがいいとかもうわけわかんない!」
「そう言われると本当にそうだね!」
「私ね、お兄ちゃんを振り向かせようと頑張っていたけど、もういい」
さすがに愛想が尽きたのか、と思いきやひなたは違った。
「もう力づくでいい。もともとそうしようと思っていたから、うん、遅かれ早かれだね。まず、そのロリババを倒してから、――わからせてあげる」
「――ひぃ」
ひなたの目は本気だった。
祐介は怯え、へたり込む。
そんな祐介の腕を河童が掴んで「あの子やべーよ、逃げなって」と言う。
「ふふん。妹さん、いや、ひなた。お前の思いはわかった。なら、私が受け止めてやる。お前たち兄妹は似たもの兄妹だ。そう言う感情は溜め込むとよくないんだ。存分にぶちまけろ!」
「言われるまでもないからぁああああああああああああああ! 腹に穴あけて内臓ぶちまけてやるぅぅうううううううううう!」
■
「ってことがあって、ガチバトルがはじまっちゃって、とりあえず河童さんを守りながら避難させたんだ」
「回想が終わったんはええんじゃが、それでおどれは逃げてきたんか?」
「まさか!」
小梅に問われ、祐介は全力で否定した。
「いくら僕でも愛するソーニャたんと、可愛い妹が戦っているのに放っておくわけがないじゃないか! もちろん、僕のために戦わないでって割って入ったら、タイミングがよくてぶっ飛ばされたよ」
「……祐介くん、そんなお約束を無理してしなくても」
夏樹は祐介が身体を張ったギャグをしたのかと思った。
しかし、祐介は否定した。
「無理したわけじゃないよ! 二人は最初こそ魔法とか使っていたんだけど、途中で掴み合いになってね。僕も巻き添えになってあっちこっち傷だらけさ」
「だから身体中傷だらけなんですね」
「一登くん、普通のコメントどうもありがとうございます。その通りなんだよ」
「待て、一登。そんなことよりも、祐介くん!」
「――そんなことよりも!?」
「河童さんはちゃんと守ったんだろうな?」
「うん、それはもちろん。河童さんたちに何かがあったら河童の守護聖人が大暴れすると思ったから全力で守ったよ!」
「ならば、よし!」
夏樹は満足したようだ。
「いや、そこで話を終わらせないでほしいっす。んで、結局、ソーニャさんとひなたさんの戦いはどうなったんっすか?」
「わかんない!」
「なぜっすか!?」
「だって、ふたりを止めようとしたらなんかよくわからない新たな神々が襲いかかってきて、パンイチになるほどの死闘を繰り広げて力尽きて由良さん家に辿り着いたんだよ」
「なんだか大変なことになってるっすねぇ。さすが祐介くんっす、もうお腹いっぱいなんで、解散っす!」
「ういー、お疲れ様でしたー!」
長々と語られたが、要は義理の妹ひなたが祐介が好きだったので、ソーニャの登場で大暴れしたってだけの話だ。
魔法少女とか、新たな神々とかは、もう無理無理じゃ驚きも継続できない。
「いやいや、もっと興味持ってよ!」
祐介の叫びは虚しく、小梅と銀子は麦茶のおかわりをして、夏樹と一登は義政と三人で談笑を始めた。
「僕の扱いが悪い!」