作品タイトル不明
61「祐介くんの気持ちじゃね?」①
大地の勇者佐渡祐介が婚約者であるダークエルフソーニャ・シラーを両親に紹介していると、義理の妹である佐渡ひなたが帰ってきた。
祐介の体感では久しぶりに会った可愛い妹に、胸が暖かくなる。
思えば、遊園地、映画館、水族館に行く約束をしていながら何一つとして約束を守れていなかった。
――これもすべて異世界が悪い。
「お、おおおおお、おにちゃ……ここここ、婚約者って……こけぇええええええええええええええええええええええええええ!」
鶏が絶叫したような叫び声をあげたひなたがぱたりと倒れる。
「ちょ、ひなた!?」
傾いたひなたをフローリングにぶつからないように祐介が腕を伸ばし抱き抱える。
「お父さん、お母さん、どうしよう?」
慌てて両親に助けを求める祐介。
医者である父が近づき、ひなたの様子を見た。
「ショックで気絶してしまったんだろうね。少し刺激が強すぎたようだ」
「そうよね。まさか祐介が婚約者を連れてくるなんて想像もできなかったでしょうし」
祐介だって自分が素敵な婚約者に出会えることができるとは思っていなかった。
今までずっと恋焦がれていたファンタジー世界の住人と出会うことなどないとわかっていたからだ。
しかし、違う。
世界はファンタジーに満ちている。
「えっと、ソーニャたんのことを紹介したかったんだけど」
「それはあとでいいじゃない。でも、ちょうどよかったわ」
「どうして?」
「あなたたちと私たちのことよ。霊能力者とかそういうことは知らないで生きていられるのなら、それでいいの。親としては、特にそう思うわ」
「そう、だね」
祐介も異世界召喚されて尊厳を踏み躙られた。
あの経験を妹が経験したらと思うとぞっとする。
夏樹のような理解者がいなければ、祐介はどうなっていたのかわからない。
夏樹だけじゃない。
小梅や銀子、千手や征四郎たちの存在もとても大きい。
みんながいたからこそ、再び異世界に赴き乗り越えることができた。
しかし、兄として、可愛い妹にそんな思いをしてほしくない。
ファンタジーを知ったことで素敵な出会いはあった。
知らなかった日々に戻りたいとは思わない。
それでも、知らないなら知らないでいい。
母と同じように、祐介はひなたを想うのだった。