作品タイトル不明
62「祐介くんの気持ちじゃね?」②
「ちょっと待った!」
「夏樹くん? ここからが重要なんだけど」
パンイチで回想をしていた祐介に、夏樹が待ったをかけた。
「ごめんね、ちょっとわからなくて。どうして妹さんは気絶したの?」
「あ、それ、俺も気になった! お兄ちゃんに婚約者ってそんなに驚くことなのかな?」
「俺様もびっくりじゃ。クソ兄貴に婚約者ができても、俺様はスルーする自信があるんじゃが」
夏樹、一登、小梅は、どうして佐渡ひなたが祐介がソーニャと婚約したことに過剰に反応したのか理解できず不思議そうに首を傾げていた。
「……あの、さすがにそれは五歳児の僕でも察することができるのですが」
「夏樹くんと一登くんはさておき、小梅さんもお子様っすか!? 紀元前から生きているっすよね!?」
義政と銀子が呆れた顔をするが、夏樹、一登、小梅はそろって「なんの話?」と再び首を傾げた。
「と、とりあえず、話が進めばわかるから続き話すね」
夏樹たちの反応の驚きを禁じ得ない祐介だったが、話を進めることにした。
■
「ひなたはどうしちゃったんだろう?」
佐渡祐介は熱いシャワーを浴びながら、妹ひなたの反応に悩む。
奇声をあげて倒れたひなただったが、しばらくして起き上がると何もなかったように祐介とソーニャを祝福してくれた。
夕食の時間も積極的にソーニャに話しかけてくれて、ふたりの関係は良好に向かうとホッとした。
ソーニャはこの世界に家がない。
ゴッドが戸籍を作ってくれるので連絡待ちだが、今後も佐渡家に住んでもらうことで話がまとまっている。
両親も、祐介が婚約者を連れてくるとは思わなかったようで大喜びだ。
祐介的には、きちんと指輪を贈りたいと考えているので、バイトを始めようと考えている。
「ツンケンしている子だけど、昔から僕にべったりだったもんね。やっぱり寂しいのかな。ソーニャさんと結婚しても、僕とひなたの関係は変わらないのに」
兄として慕われているのは嬉しいが、少し心配でもある。
「今度ゆっくりひなたと話をする時間を取ろう。だけど、まずは――――初夜だ!」
祐介は身だしなみにはそれなりに気を遣っているが、ボディーソープやシャンプーは汚れがしっかり落ちればそれでいいと思っている。
いずれ頭髪を気にし始め、シャンプーから考える日も来るだろうが、若いうちからそんなことは気にしたくない。
しかし、今日は違う。
せっかくの記念すべきソーニャとの初めての夜なのだ。
念入りに身体を洗うことはもちろん、できることならいい匂いがした方がいいだろう。
だからといって香水をつけるのは何か違うし、あまり得意ではない。
そこで、母と妹が愛用しているちょっとお高いボディーソープとシャンプーを拝借し、念入りに洗い始める。
今までこれほど身体を洗ったのは、異世界で初めて凌辱された日以来だ。
ゴッドのおかげで、祐介の身体は清らかなものであるが、それでも記憶までは消えない。
「――今宵、僕は生まれ変わる! 夏樹くんが宇宙に行って河童勇者からギャラクシー河童勇者になったように、今日から僕は綺麗な佐渡祐介くんだ! まって、今のなし。なしなし。それじゃあまるで今までが汚いみたいだね。あははは、祐介くんったら、うっかりさん!」
独り言を続けながら、祐介は念入りに身体を洗い続けた。