作品タイトル不明
60「強制イベントじゃね?」④
「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ」
祐介は股間を抑えて悶絶している。
さすがにかわいそうになった夏樹と一登が一登の腰をとんとんと叩く。
お嬢様キャラになってしまった小梅はアルコール消毒スプレーを手にした銀子によって足を消毒されている。
「やれやれですね」
義政少年が肩をすくめて苦笑していた。
「しかし、祐介さんがここまで追い込まれていながらソーニャさんはなぜ追いかけてこないのでしょうか。戦った相手と和解。いや、僕の推理的にはそれはありえない。ソーニャさんがいくらいい人だとしても、ぽっと出の恋人を認められず戦うほどです。和解して握手、とはならないでしょう」
「……義政先生は、一体人生何周目なんじゃ?」
「三周くらいは間違い無いっすね」
「え? なにそれ、僕わかんない」
「急に五歳児に戻るのが怪しいんじゃがのう!」
キャラを取り戻した小梅が、推理中の義政に突っ込むも彼は何のことかわからないとばかりに首を傾げた。
「僕のことはさておくとして、祐介さんに好意を寄せる女性に心当たりはありませんか?」
「知らん!」
「私たちは裕介くんとそこまで長い付き合いじゃないっすよ」
「そうなんですか?」
「言っておくが、夏樹とじゃってそうじゃぞ。まだ運命的な真っ二つの出会いをしてから一ヶ月も経っとらん!」
「実を言うと、小梅さんよりも私の方が先に夏樹くんと運命の出会い、そして魔剣太郎のプレゼントをしてもらっているっすけど、それでも数日の誤差っす」
「なんと!」
「祐介は夏樹と千手が異世界関係者じゃと言って連れてきたのがきっかけじゃ。まあ、あんな感じの愉快なやつじゃからあっちゅうまに馴染んだんじゃがのう」
「それは小梅さんも私も、なんならサタンさんも同じっすね」
夏樹と付き合いが長いのは幼馴染みの一登だけだ。
あとは、子供の頃に出会い数日過ごした円くらいだろう。
「裕介くん、ヒールする? する? うん、わかった。ちょっと待っててね、念入りにヒールしてあげるから」
呼吸さえできないくらいの激痛に見舞われている祐介の腰から股間にかけて夏樹が念入りに回復魔法をかけていく。
しばらくして、祐介の呼吸が安定した。
「…………ありがとう、夏樹くん。まさか突然、股間を踏まれるなんて……ごりゅって音が脳まで届いたよ」
「それ、潰れたんじゃ」
「想像しただけで痛い!」
夏樹と一登が股間を抑えた。
想像しただけで、気を失いそうだ。
それだけ男子にとって股間のダメージは大きいのだ。
「んで、裕介くんさ。話せるようになったのなら説明してくんない? 何があってうちの茶の間でパンイチで気絶していたの?」
銀子から麦茶を渡されて一気飲みした祐介は、お礼を言ってから、夏樹たちに向く。
「実は、大変なことが起きたんだ。昨日、両親にソーニャたんを紹介した後のことなんだけど…………ほわんほわんほわんほわんほわーん」
「おい、嘘じゃろ! 回想シーンが始まるような音を自分で言っておるんじゃが!?」
小梅のツッコミが冴え渡る中、由良家の茶の間で祐介は自分に何が起きたのか語り出した。