作品タイトル不明
59「強制イベントじゃね?」③
「ほっといちゃっていいの!?」
「一登……幸い、祐介くんは力尽きている。この間に、近所の公園のジャングルジムの上にでも置いておけば、酔っ払った大学生扱いで済むって」
「扱いが雑だよ! さすがに祐介くんでもかわいそうだよ!」
「でも、祐介くんだし」
夏樹にとって佐渡祐介は大切な友人である。
とくに、過酷な異世界で勇者経験があるという耐え難い経験をした仲でもある。
祐介も、異世界から帰還したばかりの時は戸惑い、苦悩していた。
夏樹は力になりたいと思ったし、元気になった祐介の姿を見て嬉しく思う。
ただ、異世界と決別し、ソーニャ・シラーという恋人と出会った祐介はちょっとテンション高めで鬱陶しい。
いや、今までも十分にテンションは高かった。
どうしてそこまで人外娘大好きなの、と夏樹がちょっと引くほどだ。
そんな祐介の扱いが少々雑になってしまうのは仕方がないことだった。
「ていうか、パンイチなのは仕方がないとしてその格好でうちに来るなよぉ。サタンさんや一登だったからよかったけど、お母さんだったら大事件だぞ!」
「……春子さんなら、あらあら祐介くんじゃないって感じで普通に終わりそうだけど」
「そだね。うちのおかあさんそんな感じだった」
むしろ、母ならば裕介を夏樹の部屋に通して、「あ、夏樹。裕介くんきているわよ」と言って話は終わりかもしれない。
「おどれら、本人が起きとらんのじゃからそのまま放っておけばええではないか」
「小梅ちゃん、そりゃそうだけど」
「私的には、ソーニャさんが今どうしているかの方が心配っすよ」
「あ、確かに」
麦茶のおかわりをするために立ち上がった小梅と銀子が、祐介よりもソーニャの安否を気にしていたので夏樹は目を瞑る。
「あ、ソーニャさんの魔力は祐介くんの家にあるから大丈夫だと思う」
「……わかるんかーい!」
「え、さすがにそれはやばくないっすか!」
夏樹はざっくりとだが魔力だけでソーニャがどこにいるのか把握してみせたのだが、女性陣からの反応は悪い。
居場所を常に把握されるのは、少し怖いかもしれない。
「さすがに普段からしないって。これ、探る側も相手に「あ、探られてる」ってわかっちゃうから。あと、小梅ちゃんは普段から魔力を限界まで抑えているからわからないし、銀子さんだって霊力はそこまで大きくないから同じ感じの人はいっぱいいるから探れないよ」
探ろうと思えばふたりのことは探れる。
だが、言わない方がいいと判断した。
ふたりの力の波長を覚えているからこそ、探ることは可能だ。
ソーニャも、異世界の魔族ということで魔力が少し違うため探りやすいだけである。
探ったことは隠していないので、向こうも夏樹が探ったことに気づいただろう。
携帯電話を持っていない彼女に夏樹からリアクションする意味も兼ねて行ったのだ。
「おどれもそろそろ起きんかい! クソ魔王が買い物から帰ってきて甲高い悲鳴上げられても不愉快じゃ!」
「おんぬるぽっ!?」
「――きゃっ、今、ぐにゃっとしましたわ! 女性にはないぐにゃっという感覚が足の裏に! 気持ち悪いですわ!」
「小梅さん、キャラが! キャラがバグっているっすよ!」
祐介の尻を踏みつけようとした小梅だったが、足がすべり太ももの付け根に踵が刺さり、祐介の大事な部分を踏んでしまった。
急な衝撃に祐介は奇声を上げ、小梅のキャラがブレる。
「マジでどうすんの、これ!?」
混沌としていく由良家の茶の間の惨状に、さすがの夏樹もお手上げだった。