作品タイトル不明
58「強制イベントじゃね?」②
茶の間にうつ伏せに倒れているパンツ一枚の祐介の姿を見て、夏樹はなんだかとっても面倒臭いことが起きたのではないかと考えた。
同じ空間にいながら、祐介を見て見ぬふりをして麦茶を飲んでいる小梅と銀子に視線を向けると、目が合った。
しかし、ふたりは関わりたくないとばかりに目をそらす。
(……祐介くんがピンク色のボクサーショーツを履いているのがちょっとイラッとする)
ちなみに、サタンのパンツはハート柄だ。
「……ねえねえ、祐介くんっていつ来たの?」
なんとも言えない顔をしている一登に尋ねた。
「えっと、俺が午前中に夏樹くんに会いにきた時にはいなかったから午後だと思う。俺も、夏樹くんがいないならお邪魔しているのもなんだからと思ってアルフォンスさんのところにいたんだよ」
一登はお昼をアルフォンスの食堂で済ませると、銭湯で風呂に入り、リリスさんの喫茶店でパンケーキを食べたという。
「満喫してるなぁ!」
そして、そろそろ夏樹が帰ってくるだろうと思って由良家に戻ってくると、パンツ一枚の祐介が倒れていた。
「声をかけてみて返事はなかったんだけど、息はあったから問題はないかなって」
「……パンツ一枚で人の家で倒れていたら大事件じゃん。よかったよ、お母さんが第一発見者じゃなくて」
「俺のあとにサタンさんがきて、きゃぁあああああって悲鳴あげていたから、春子おばさんじゃなくて本当によかったよ」
「サタンさん……ちょいちょい魔王っぽくないなぁ」
最近ではすっかり主夫として板についてきた魔界の覇者の意外な一面に、夏樹は微妙な顔をする。
そして、サタンの娘である小梅は父のエピソードを聞きたくないようで耳を塞いで「あー」と言っている。
「で、どうするか。この祐介くん」
「僕に任せてください」
「――っ、義政大先生!」
義政は眼鏡をくいくいしながら祐介を観察する。
しばらくして、
「――推測ですが」
義政は祐介の現状から推理した答えを披露する。
「ソーニャさんを無事にご両親に紹介することに成功した祐介さんですが、いざ初夜というところで邪魔がはいったのでしょう。そして、戦い。いえ、むしろ戦ったのはソーニャさんだったのかもしれません。そして、相手は……おそらく祐介さんに想いを寄せる女性ですね。その証拠に二種類の引っ掻き傷があります。察するに、パンツ一枚で準備万端の状態で女性二人の戦いに割って入ったのでしょう」
「さ、さすが義政大先生! 推理が冴え渡るぜ!」
「祐介くんを想う人って、意外とモテるんだ……」
夏樹は無条件で義政の推理を信じ、一登は普段の祐介の言動からソーニャ以外に異性としての好意を持つ者がいることにちょっとだけ驚いた。
「女性同士の戦いは意外と白熱したのでしょう。助けを求めにきた祐介さんは、由良家の茶の間で力尽きた――と見ていいでしょう」
「よし! 放っておこう!」
「えぇええええええええええええええええ!?」
女性の戦いに介入したくなかった夏樹の思い切りの良さに、一登がびっくりして叫んだ。