作品タイトル不明
57「強制イベントじゃね?」①
「ほえぇ……征四郎さんはモテモテだなぁ」
「ここだけの話、征四郎おじさんは他の家からも人気があるんですよ。僕のクズのお手本のような父親と母親と違って真面目で優しいナイスガイですからね。最近では、神無家の魔剣を失うも、月読命様と素盞嗚尊様より神剣を賜わりましたからね。征四郎おじさんの評価は鰻登りですよ」
くいくい、と眼鏡に触れながら立派な叔父を自慢する義政だ。
「で、そんな征四郎さんが家から離れている間に周囲を固められていてこりゃまずいと逃げてきたと」
「……残念ですが、征四郎おじさんは女性に弱いです。敵ならばさておき、慕ってくれる女性に何かできるわけはありませんからね」
「…………そうだよね!」
「間があったことが気になりますが、今は気にしないことにしておきます」
「うん。ありがとう。それで、征四郎さんはどうしているの?」
「アルフォンスさんのお店で自棄炒飯中です」
「……征四郎さん」
なぜ自棄炒飯なのか不明だが、大人はいろいろ大変だな、と思った。
「助けてくれたお礼にお店まで送るよ」
「ありがとうございます。僕もあまり慣れない土地でつい冒険をしてしまいましたが、さすがに廃工場は怖かったんですよ」
「またまたー」
義政と他愛ない話をしながら、夏樹は商店街に戻ってきた。
見知った顔と挨拶していると、
「おーい! 夏樹くーん!」
「あ、一登だ。やっほー!」
由良家のある方角から三原一登が走ってくる。
肉屋で買ったコロッケを食べながら夏樹と義政が手を振る。
「こんにちは、一登さん」
「義政くん、戻ってきていたんだね。また会えて嬉しいよ。って、そうじゃなくて、大変なんだ!」
「まーたなにかあったの? 俺、もう今日の分のイベントを終えたからもうお腹いっぱいなんだけど」
「そんなこと言ってないで早く、家に!」
「……イベント発生源は家ですか、そうですか。――強制イベントじゃん」
夏樹は泣きそうになった。
今日は朝から月読先生のお迎え、萌乃萌葱先生と伝説の木、クラスメイトの交流、そしてギャラクシー流といった感じで四つのイベントを乗り越えていた。
だというのに、五つ目のイベントが強制イベントとして立ち塞がるとは、いくら勇者である夏樹でも挫けそうだった。
「僕も一緒にいきましょう。夏樹さんと一登さんたちだけに大変な思いをさせるわけにはいきません」
くいくい、と眼鏡の位置を動かす義政に、夏樹が喜んだ。
「義政大先生がいれば、百人力だぜ! イベントでもなんでもかかってきやがれ! 師匠の名にかけてイベントを成し遂げてやるぜ!」
義政を肩車した夏樹は、一登と共に自宅へ走った。
「ただいま! イベントはどこだぁあああああああああああああああ!」
義政を玄関で下ろした夏樹が茶の間に乗り込むと、
「…………………………」
パンツ一枚で茶の間に倒れる佐渡祐介の姿があった。
「――残念ですが、迷宮入りです」
夏樹では手に追えない事件が起きたことを確信した。