作品タイトル不明
間話「さまたんのピンチじゃね?」②
わかっていた。
わかっていたが、見て見ぬふりをしていた。
しかし、向き合う日が来てしまったようだ。
「…………マモンが来てからまもんまもんと家事をやってくれるようになったのはありがたい。本当にありがたいんだけど、食事と酒が充実しすぎてしまった!」
マモンは、サマエルのいる青森に今まで近づいたことはない。
隠居している身であるサマエルを再び魔王にと掲げるマモンであったが、同じくらい隠居生活を楽しんでいるサマエルの暮らしを邪魔したくなかったのだ。
一方で、マモンが来る前のサマエルの生活は日が昇る前から日が沈むまで畑で働きながら、近所のよくしてくれる方々と交流をする日々。
楽しかったことは間違いないが、一線は引いていた。
おそらく近所の方々は、サマエルを「訳あり」または「人間ではない」と察していただろう。
食事は基本的に腹が満たされればいい。弁当や、お裾分けでいただいたもの、あとは酒ばかりだ。
サマエルも普段はにこにこして愛想もいいが、受け継いだ畑を守らなければ、と気を張り詰めていた。
しかし、マモンが来てから全てが一変した。
愉快な語尾をつけて話をする海外のイケおじは、あっという間に近所に馴染んだ。
サマエルが「正体隠す気ねえだろ!」と何度も突っ込むほど、ありのまま接した。
サマエルも、まさか七つの大罪の魔族と名高いマモンが近所のおばちゃんから譲り受けた割烹着を身につけて家事を始めるとは思っていなかった。
サマエルの引いていた一線をマモンは軽々と超えてしまった。
すると、近所の方々が私にも待っていたとばかりに構ってくれるようになった。
もともとよくしていただいていたが、さらに良くしてもらう日々。
――サマエルは理解した。
――魔王の座が欲しかったわけではない。
――農家として畑を守る義務に殉じたかったわけではない。
――ここに根付き、みんなと笑い合いたかったのだ。
自覚すれば早かった。
雇っていた従業員と距離を縮め、その家族とも仲良くなった。
畑仕事にとらわれず、近所との交流にも力を入れた。
さまたんがそうすれば、マモンはもっとみんなに踏み込んでいく。
楽しかった。
みんなでわいわいおしゃべりしながら食卓を囲んだのは、拾ってくれた老夫婦との日々を思い出した。
かつて良くしてもらったように、さまたんもみんなに同じことをしよう。
そう決めて、やれることはすべてやった。
ひとつ充実すると、心に余裕が出てくる。
酒もいつもより美味しくなった。
軽く飲めばいいと思っていた酒も量が増えた。
お弁当を買うのをやめて、マモンの料理を堪能するようになった。
魔族にとって瞬く間の一ヶ月だが、サマエルにとっては生涯忘れることのない日々だろう。
そしてこれからの生活も、ずっと宝物として残るだろう。
と、いい感じで過去を振り返ったが、要は――いろいろ充実して、ご飯がうまい! お酒がうまい! まもんまもん! と気にせず飲み食いしていたら、見事に太ってしまった。
残念ながら、それだけだった。
「さまたん様、まもんまもんたちも昔のようにぴっちぴっちの若い頃のようにはいかないのですから、まもんまもんと代謝が衰えるのでまもんまもん」
「そりゃね! 中年通り越して老人って言われても仕方がないもんね! でも、まだ若いつもりだよ! ていうか、お前は太らないな!」
「まもんまもん流は太りままもんまもん!」
「なにその流派!?」