作品タイトル不明
51「捕まったんじゃね?」②
――向島市郊外にある廃工場。
朽ちる寸前のパイプ椅子に括り付けられた夏樹は、身動きができずにいた。
ガムテープで厳重に巻かれているのもそうだが、他にも鎖やロープでこれでもかと縛られていた。
何らかの術が施してあるようで、力がうまく出ない。
「んんー! むぅー!」
ガムテープを口で貼られているせいもあり、喋ることもできない。
「由良夏樹くん。私はこれでもなかなか良い家の生まれなんです。そんな私を二度も馬鹿にする態度を取られたのは初めての経験です。うんうん、こちらにも非がありますので、許してあげましょう」
少女の手にはガスバーナーが握られている。
これから何をされるのだ、と夏樹の額に汗が浮かぶ。
「知っていますか? ガスバーナーで足首周辺を炙ると激痛のようですよ」
「むーーー! むぅーーー!」
「なんて、冗談です。さすがにそんな弱いものいじめのようなことはしません」
少女は笑い、ガスバーナーを地面に置いた。
「さて、由良夏樹くん。自己紹介をしたいのですが、君もこのままでは嫌でしょう。今から口のガムテームを外しますが、騒ぐようなら縫い付けますからね」
「――ふが!?」
「いいですか?」
夏樹は必死に頷いた。
少女の目は本気だった。
夏樹がここで少しでもおかしなことをしようものなら、本当に口を縫い付けるだろう。
(ひえっ、こわいよぉ!)
今まで会ったことのない強くも恐ろしい少女に夏樹は震えながら、必死で頷いた。
少女は手を伸ばし、夏樹の口からガムテープをゆっくり剥がしていく。
こういうものは勢いよく剥がしてしまうとダメージが少ないはずなのに、わざとだろう。とても時間をかけて剥がしていく。
粘着力が強いのか、とにかく痛かった。
二分ほどかけて夏樹の口はガムテープから解放された。
「い、痛かった」
「君に馬鹿にされた私の心は何もスッキリしていませんが?」
「ご、誤解です! 馬鹿になんてしていません!」
「あら、そうなのですか?」
「うっす! 舐めた態度取っただけです!」
「…………なるほど。君はそういう子なんですね。今回は素直さに免じて許しましょう」
少女は夏樹の前に立ち、まっすぐ視線を向けてきた。
(――なぜ、気づかなかった)
夏樹は、自分がとんでもないことを見逃していたことに気づいた。
少女は、黒髪を斜めの切り揃えたおかっぱ頭をしていた。
睨んでいるような印象を与える吊り目のせいで、どこか不機嫌そうにも見える。
背丈は、一七〇はないだろうが、背は高めだ。
年齢は夏樹よりも少し年上だろう。十六、七歳ほどだ。
膝より上の紺色のショートパンツの上に、グレーのニットを羽織っている。足元は皮のサンダルを履いていた。
おしゃれなかっこいい系の女の子。
そんな印象を受けた。
だが、気にするのはそこではない。
全体的にスラリとした少女の顔立ちは日本人に見える。
しかし、足は長くすらりとしていてモデルのようだ。
何よりも、ショートパンツから覗く御御足は――美脚だった。
「俺の……負けです」
良き脚を見れて満足だ。
夏樹は思い残すことはないと、涙を流した。
「え? なんですか、急に? 気持ち悪い」
もちろん、少女は夏樹の急な言動に引いていた。