作品タイトル不明
52「まさかの孫じゃね?」①
「べ、別にあんたの美脚に見惚れたわけじゃないんだからね!」
「さすがに気持ち悪すぎでしょう! 足を見たとしても、なぜ見惚れていたとわざわざ本人に言うのでしょうか? そういうことって、普通、隠しませんか?」
「……おっしゃる通りです」
(……うん、セクハラ案件でしたね。申し訳ないけど、このやり取りでわかった。この子、向島市の人間じゃない)
声に出していたら、「どんな判断理由だ!」と突っ込まれていたかもしれないが、不幸中の幸いというべきか、夏樹の心の声は漏れていない。
「……河童好きで、美脚好き、異世界帰りの中学生ですか。おじいちゃんが褒めていたのでどれほどの人物か期待していましたが、がっかりです。どのくらいがっかりかと言うと、楽しみに待っていた新刊の発売日が延期したくらいがっかりです」
「めちゃくちゃがっかりじゃん!」
「ですから、そう言っています」
「待って待って、ていうか、おじいちゃんって誰!?」
夏樹は疑問をぶつけた。
「勝手に期待されて失望されてもいい迷惑だ! 俺は生まれてから今日までずっとこんな感じだからな! 近所の人からもなっちゃんって呼ばれて可愛がってもらっているし、親友もいるし! 近所の小学生なんて、うわー、なっちゃんだーって背中に蹴り入れてくれるんだぞ!」
「最後は嫌われていませんか?」
「そんなことないもん!」
はぁ、と少女が大袈裟にため息をついた。
「そもそも君が、愉快な偽名を名乗ったり、私から逃げたりしなければ話はとっくに終わっていたんです。……いいでしょう。私もきちんと名乗りたいと思っていました」
「どうぞー、名乗ってー」
少女が少しイラッとした顔をした。
だが、すぐに感情を消す。
「では、自己紹介を。私の名前は、いつる・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星です」
「名前なっが! めっちゃなっが! あれ?」
夏樹は少女――いつる・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星の名に、どこか聞き覚えがあった。
ただ、長いためどこに聞き覚えがあるのかわからない。
そんな夏樹に気づかず、彼女は自分が何者であるのかの答えをくれた。
「君に力の使い方のいろはを教えた、翔・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星の一番弟子にして、孫です」
「え? え? え?」
刹那、異世界でお別れをした師匠を思い出した。
「し、師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」