作品タイトル不明
49「拒否られてね?」
「…………では、この問題がわかる人」
「はい!」
ぴしっ、と垂直に手をあげる夏樹に教師は珍獣でも見るような目を向けた。
教室のクラスメイトたちも、何事だと驚いている。
「由良」
「はい!」
「具合が悪いなら、保健室に行ってきなさい。無理せず帰ってもいいんだぞ」
「――そんな馬鹿な!」
午後の授業を頑張っている夏樹に対し、教師の言葉はあまりにも無体だった。
いや、ある意味気遣ってくれているのかもしれない。
しかし、夏樹にとっては心外すぎた。
■
「はぁ」
同時刻、職員室で月読はため息をついていた。
「どうしましたか、月読先生。コーヒーでもどうぞ」
「権藤先生、ありがとう。いえ、修学旅行の件ですが」
「ああ、例のですね」
ノートパソコンを開き苦い顔をしている月読は、教師としてもプライベートでも親しくしている体格の良い権藤からコーヒーを受け取った。
権藤はバスケ部の顧問だったのだが、いろいろ問題が起きてしまったため、バスケ部は廃部となり、顧問もしていない。
一部の権藤の責任問題を追及する保護者もいたが、普段から慕われている権藤を庇う保護者は多く、何よりも一番悪いのは松島明日香と男子生徒たちだ。
明日香は転校となり、男子生徒も謹慎処分中だ。
もうすぐ復学するだろうが、問題を起こした生徒たちに対する他の生徒たちは厳しい。
とくに無関係だったバスケ部員たちや、体育館を使用制限をされてしまった他の部の生徒から悪感情を向けられている。
何よりも、不純異性交遊の果てに謹慎処分になったということは生徒中に知れ渡っており、学園のカースト制度上位にいたバスケ部の男子たちは、卒業まで生活し辛いだろう。
「先方はなんと?」
「茨木童子を単身で倒せるような少年が何をするのかわからないので、来られては困る、とのことですよ」
「由良も大変ですなぁ」
権藤は一般人であるが、裏事情に通じている。
学校には、人外の血を引く者も少なからずいる。
そういう生徒のために、裏事情に関わっている教師もいるのだ。
そんな権藤は、夏樹が霊能関係であることは知っている。
さすがに異世界に勇者として召喚されて帰還しました、とまでは知らないが、何かしらに巻き込まれたことは理解しているので月読と同じく気にかけてくれている。
権藤は、月読のノートパソコンを覗き込む。
そこには、「向島第一中学校京都修学旅行に関して」という件名と共に、長々としたメールが書かれていた。
要約すると、こうだ。
――修学旅行シーズンに、由良夏樹という茨木童子を倒した強者を送り込んでこないでください。
「ラノベだと修学旅行の京都でバトルは鉄板なんですがね。まあ、実際にやられるほうはたまったもんじゃないということですね」
うんうん、と納得しコーヒーを啜った。