作品タイトル不明
16「夢のスペシャリストじゃね?」①
「ま、なんだ。もう少し待ってろ。俺の友人のばっくんがきてくれるぜ」
「……ばっくんってだぁれ?」
「夢のスペシャリスト! 人間の悪夢を食べる、獏さんだ!」
「え? 爆散?」
夏樹は首を傾げた。
なぜ夢の話で爆散するのかまるで意味がわからなかったのだ。
「爆散じゃねえよ! なんでこの話のノリで爆散になるんだよ! 普通に考えておかしいだろ! 辻褄合ってねえだろ! なんなのこの子! それとも今時の中学生ってこんなに話が通じないの?」
「通じないもなにも、獏ってなに?」
「――ほにゅ?」
「声が気持ち悪い!」
「ひどい! じゃなくて、獏しらないの?」
「知らない」
「嘘だぁ! 一登、お前は知っているよな?」
夏樹がまるで獏を知らないため、ガープは慌てて一登に尋ねた。
「うーん、ふんわり知ってるかな」
「ふんわり!? そっか、今時の子はそっかー」
ガープは困った顔をして、小梅と銀子、そして千手を見た。
「さすがにお前らは知ってるよな?」
「知らん!」
まずはっきり言い放ったのは小梅だった。
「一応は知っているっすよ。日本では、悪夢を食べてくれるって感じっすけど、中国の方じゃ邪気を払うって言われているっすよね」
「そうそうそれそれ!」
銀子は霊能力者だけあって、漠に対しての少しだが知識があるようだ。
千手が後を引き継いだ。
「だけど、伝説上の生物だろ。いる、なんて聞いたことがねえんだが」
「あたいも知らないなぁ。少なくとも、日本じゃ見たことないから」
あくまでも「伝説上の生物」としての認識だった。
虎童子も見たことがないという。
「あのさ、ガープさん。あんた疲れているんだよ。さっきの電話もエア電話だろ? いいんだって、そういう役に立ちますアピールしなくたって」
「そうじゃねえよぉおおおおおおおおお! いるんだって、伝説上の生き物ってある意味そこにいる鬼や、天使の小梅や、魔族の俺だってそうだろ! ゴッドなんて伝説どころの騒ぎじゃな〜いだろ!」
「いやぁ、それほどでも――あります!」
「後光で見えないけど、絶対ドヤ顔してるだろ! このゴッド、そういうのはいいんだよ!」
ガープの言う通り、天使も魔族も伝説上の存在だ。
そういう意味では、獏も同じだろう。
夏樹たちが見たことがないだけで、実際にいるのかもしれない。
都市伝説の小さいおじさんもいた。
妖怪たちもいた。
河童もいたし、河童大神様もいた。
ならば獏もいるだろう。
おそらくツチノコもいるはずだ。
「とりあえず、獏さん待ちか」
夏樹が時間がどのくらいかかるのだろうか、と考えていると、からん、と喫茶店の扉が開く音が鳴る。
「あなたたちにお客様よ」
リリスの声が響き、一同が喫茶店の入り口を見る。
「――ほえ?」
「……なん、じゃと」
「……ひえー」
「……うわ」
「……なんでそうなるだ」
「……たいがー」
一同が変な顔をしてしまった。
なぜなら、みんなの視線の先には白と黒の体毛に包まれたマレーバクがいたのだ。
しかも、後ろ足で器用に立っている。
おしゃれなのか、茶色い腹巻きと同じ色のハットをかぶっていた。
彼か彼女かわからないが、バクさんは夏樹たちに向かいハットをとって軽く会釈する。
夏樹たちも会釈を返した。
「――って、獏じゃなくてマレーバクさんじゃねえか! なんかかわいいな、おい!」
伝説上の生物ではないバクを見た夏樹は、とりあえずガープの顔面に拳を叩き込んだ。