軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17「夢のスペシャリストじゃね?」②

「マレーバク。哺乳類ウマ目バク科バク属に分類される奇蹄目である! インドネシア、タイ、マレーシア、ミャンマーで存在が確認されている!」

「……夏樹。おどれは誰に向かって説明しとるんじゃ! なんで窓の外に向かって話しとるんじゃ!?」

「あ、つい現実逃避を……」

二足歩行のマレーバクが現れて夏樹は少々混乱していた。

マレーバクさんは、夏樹たちと同じテーブルにつき、ガープの隣でお手拭きで顔を拭いている。

「気持ちはわかるんじゃが、話がすすまんからさっさとツッコミ直すんじゃ」

「――俺が!?」

「勇者の出番じゃ」

「俺はツッコミの勇者じゃないよ! どちらかと言ったら、それは千手さんの気がするんだけど!」

「俺に大役を押し付けるんじゃねえよ!」

千手に丸投げしようとしたが、彼は彼で無理だと叫んだ。

「……おい、お前ら。ばっくんをいつまで待たせてんだよ。いくら初めてみる伝説のばっくんにテンション上がったからって、まずはご挨拶だろう! ごらっ!」

鼻にティッシュを詰めたガープが、夏樹たちを叱る。

彼の言うことはもっともだった。

礼を欠いてはいけない。

「ガープさんのくせに生意気な。だけど、間違っていない。みんな、バクさんにご挨拶だ。――こんにちは!」

「こんにちは!」

「はい、こんにちはん」

「って、小学生か、お前ら!」

声を揃えて挨拶する夏樹たちと、片手をあげて挨拶を返すマレーバクさん。

「中学生だよ!」

「お前と一登以外はみんないい大人だろうが!」

「そこを突っ込んだら何もできないじゃない!」

「……なんかごめん」

「謝らないでよぉ! んで、マレーバクさんを紹介してよ」

「お前な、ばっくんに対してマレーバクって……向こうは普通に存在する動物で、こっちは伝説上の生物なんだからもうちょっと敬意を持てよ」

「敬意はあるよ! でもいろいろ感情が追いつかないんだよ! とりあえずご紹介して!」

仕方がねえな、とガープが咳払いをすると、アイスコーヒーを飲んでいるマレーバクの紹介を始めた。

先ほどから思うのだが、このマレーバクはかなりマイペースだ。

「ったく、しょうがねえな。耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ。彼こそは、俺の友達! 漠のばっくんだ!」

「どうもですん。漠のマレーですん。よろちくん」

「やっぱりマレーバクじゃねえかあああああああああああああ!」

「ノンノン、漠のマレーですん。マレーバクじゃありません」

「違いがわからねええええええええええええええええええええ!」

叫ぶ夏樹に、ガープがおしぼりを投げた。

夏樹は顔で受け止める。

「ばっくんが名乗ったんだ、お前も名乗れ!」

「……三代目ギャラクシー河童勇者由良夏樹です! しくよろー!」

「――三代目だったの!? 初代と二代目いるの!? こんなのがふたりもまだいるの!?」

「おま、こんなのって失礼すぎだろ! ギャラクシるぞ!」

「なにそれ!?」

夏樹とガープが睨み合う。

「表出ろや……ありゃ?」

「上等だ……んみゅ?」

喧嘩が始まりそうになった夏樹とガープが目を擦る。

「夏樹くん? ガープさん?」

眠たそうな顔をするふたりに、一登が心配そうに声をかけた。

だが、返事はない。

代わりに、――だんっ、と音を立てて夏樹とガープがテーブルに額を打ちつけた。

「――ちょ」

「ぐー、ぴー、かー、ぱー」

「え? これ寝息? 寝息でいいの? 夏樹くんってこんな寝息してたっけ!?」

「がー、ぷー」

「ガープさんに至っては名前じゃん! 寝息が自己紹介じゃん!」

「三原……お前をツッコミ親善大使に任命する!」

「やめてよ、千手さん! ひとりじゃ捌けないよ!」

ツッコミ役を押し付け合う一登と千手。

「……いやいや、何が起きたんすか? 夏樹くんになんらかの干渉できる方なんて今までいないと思ってたんですけど! まさか、ゴッドが?」

「いえ、私ではありません」

「漠がやりましたん。漠は夢のスペシャリストねん。ガプくんから心を閉ざす女の子の話は聞いていたのん。漠なら彼女の心に夢として通じることができるのねん」

「一人称がまさかの漠!?」

「個性強すぎじゃろ!」