作品タイトル不明
15「昨日の敵は今日の友じゃね?」②
「あー、ガープさん! ガープさんじゃないか! アマイモンの部下で、三下で、なんだかんだと面倒見のいい家事が得意のガープさんじゃないか!」
「……由良夏樹……お前、俺のことを忘れていたくせに、まるで誰かに教えるように説明口調になりやがって! あと誰が三下だ!」
ガープは三十歳ほどの男性の姿だ。
ワイドカーゴパンツにスニーカー、Tシャツ一枚というとてもラフな格好をしていた。
初対面ではあった二本の角と悪魔らしい翼は、引っ込んでいるようだ。
「お邪魔するぜ」
「お邪魔なら帰って」
「さーせん! って、そういうのいいから!」
空いている席に座ると、夏樹の前に置かれている水を手に取り飲み干した。
「……殺す」
「おま、サービスで置かれた水を飲んだくらいで。心狭くない? 女の子にモテなくない?」
「…………なっちゃん心広いから。超広いから。鳥取砂丘レベルで広いから」
「たとえが分かり辛え。海外の魔族に分かりやすい例を出せよ。あとモテないの気にすなって。意外とガキらしいところがあるようで、ちょっとガープさん安心したわ」
「……馴れ馴れしいおっさんだな」
「お兄さんって言え!」
夏樹とガープは過去に戦っている。
その戦いで、ガープは夏樹に腕を斬り落とされてもいる。
異世界では、結局、戦いこそしなかったが、フレンドリーに接してるガープも、彼と普通に接している夏樹も割り切りが良すぎるように周囲は思うだろう。
「んで、どこで聞き耳立てていたのか知らないけど、――っ、まさかお前が王子様のキッスをするつもりじゃ!」
「しねえよ! そもそも王子様のキスをすればいいっていう問題じゃねえだろ!」
「では、ガープ。あなたになにか解決策があるのですか?」
「ちっ、ゴッドか。いたのか」
「ものすごくそばにいましたけどね! これだけ後光を発しているのに、気づかないあなたのほうが問題では!?」
ガープはやはり魔族だけあり、ゴッドをよく思っていないようだ。
「俺の友人に夢に干渉できる奴がいる」
「夢に?」
「おう。まあ、杏が自分に思うことがあって自分の中に引きこもっているのなら、夢を通じて会いに行ってやればいいじゃねえか。そこで、話を聞いてやるなりしてやれって」
「誰が?」
「その前に、夢に干渉できる俺の友達を気にならないのぉ? ガープさん、最近の若い子の考えていることわからなくて困惑しちゃう!」
「そういうのいいんで。呼んでくれるなら、呼んでよ。その人」
「ったく、最近の中学生は年上を敬うことを知らなくて嫌になるぜ。ちょっと待ってろ」
ガープはスマホを取り出すと、慣れた手つきで操作する。
「あ、もしもし。俺俺! そうそう、うん。やっほー! おひさーっす! なになに、えー、そういうこといわないでよー。うっすうっす、まじまじちゃんと今度ね。んでさ、ばっくんにお願いがあるんだよー。やだなぁ、そうじゃないよぉ。ちょっと困ってる女の子を救うために、さ! そうそう、俺たちじゃないと救えないって! あざーっす! んじゃ、待ってるんですぐきてね! うぇーい! んじゃ、あとで! ――おう、来るってさ!」
「なんか普通のノリのいい兄ちゃんみたいな電話が嫌! もっと魔族らしく話してよ! マモンさん見習って! あの人みたいにもっと主張してよ!」
「しねえよ! なんで自分の名前を語尾にして連呼しないといけないんだよ!」