作品タイトル不明
14「昨日の敵は今日の友じゃね?」①
シフォンケーキとアイスを食べ終えた夏樹は満足そうにお腹をさすると、立ち上がる。
「んじゃ、また明日!」
「はい。また明日。――って、ちょっと待ってください。ゴッド、びっくりです。本当に自然に帰ろうとしましたね?」
「うっす!」
「あら、いいお返事。ではなくてですね、綾川杏さんをどうするかという話が決まってないのですが」
「うっす!」
「……夏樹くん、勢いとノリで帰ろうとしているでしょう」
「うっす!」
「帰しませんからね」
「……うっす」
勢いでは駄目だとわかり、夏樹はしょんぼりして椅子に再び着席する。
「――俺様、わかっちゃったんじゃが!」
「どったの、小梅ちゃん。」
「これはあれじゃ、あの小娘は王子様のキッス待ちじゃ!」
「それだぁああああああああああああああああああああ!」
その発想はなかった、と夏樹が叫ぶ。
小梅はドヤ顔だ。
「俺様も憧れたもんじゃ。あの小娘は、これ幸いと王子様のキッスを待っておるんじゃ!」
「天才すぎる! 少女漫画をこっそり愛読しているこのなっちゃんをしてもその発想はなかった!」
「いかんのう、夏樹よ。令和の少女漫画も面白いが、平成は名作揃いじゃぞ?」
「――精進します!」
「うむ、わかればええんじゃ」
「よし! 一登、ぶちゅっとやれ!」
「僕が!?」
王子様のキスとなれば、一登しか適任はいない。
「……この場合、由良じゃねえのか。あの嬢ちゃんが求めているのは、その、なんだ、お前だろ」
千手は少し一登を気にしながら、やんわりと夏樹がすべきではないのか、と言う。
一応、一登が杏へ想いを寄せていたことはわかっている。
今は違うと言っているし、幼馴染みの情で動いているようだが、それでも王子様の役目は一登ではないと言うのは千手としても辛いようだ。
「え? 俺? やだよ? 宗教上の理由からできないんだもん!」
「嘘つけ、無宗教だろ!」
「やだなぁ、俺はビッグギャラクシーカッパー教の敬虔な信者だよ!」
「そんなもんねえよ! あと、本当に今更だけど、河童と宇宙を混ぜんな!」
「いーやーでーすー!」
「おい、全員でこいつ押さえつけて、お嬢ちゃんの唇にぶちゅーっとやっちまおうぜ。それが一番早い」
「一番難しくもあるっすよ!?」
千手は力技でなんとかしようとするが、その力技が一番通じないのが夏樹だ。
「あの、そもそも王子様のキスで起きるなんてことはないと思うのですが。ゴッド困っちゃう。夏樹くんたちっていつもこんなノリなんですか?」
「……夏樹くんたちがすみません」
ゴッドが驚いていると、一登が居た堪れなくなって謝罪した。
そんな時だった。
――からんっ、と喫茶店の扉が開いた。
「話は聞かせてもらったぜ!」
ひとりの男性が入ってきた。
男性は、リリスに九十度腰を折って深々と礼をすると、夏樹たちに近づき手を上げる。
「よう、さっきぶりだな」
「あんたは……………………えっと、六反田さん!」
「ちげえよ、誰だよ! 間が長かったから嫌な予感したけど、忘れないでよ! 俺は、アマイモン様の最大にして最高の従者! ガァアアアアアアアアアアアアアアアアプさんだ!」