作品タイトル不明
12「思うことがあるんじゃね?」②
ゴッドは続ける。
「彼女の心をのぞいたわけではありませんが……現実が嫌なのでしょう」
「どうして」
一登が誰に問うわけでもなく、つぶやく。
「……三原。なんつーか、綾川のお嬢ちゃんはアマイモンの旦那やガープの旦那、アテーナーの姉御に今までの言動が間違っていたってことを教えらたらしいじゃねえか」
「……うん。ガープさんが言ってたね」
「今までは自己中心的だった子が、客観的に自分を見ることができるようになったら、そりゃ思うことはあるだろうさ」
杏が、自分を客観的に見ることができたのであれば、何を思うだろう。
恥じるのか、嘆くのか、開き直るのか、それとも現実逃避するのか。
「俺だったら、恥ずかしくて申し訳なくてお前さんたちに合わせる顔がねえ。年頃の女の子だ。もっと繊細だろうさ。目覚めたくないって思っちまうことは、仕方がねえんじゃねえかな」
「つまり自分の黒歴史を直視できなくて引きこもっとるってことじゃな?」
「……小梅の姐さん、俺が少し柔らかく説明したのに台無しだぜ!」
小梅の言い分はさておき、千手の言いたいことは理解できる。
「……そんなこと気にしなくても。ううん、気にしても、気にしているからこそ、これから良い方向に向かうんじゃないか」
一登は杏の心情を汲み取りはしても、そこで逃げるのは良くないと思っているようだ。
杏は逃げたのだ。
今までしてきたことを反省したからこそ、合わす顔がないと思うのは仕方がないと思える。
杏はまだ中学二年生だ。小梅の言うよりに、自分のことを直視できずに逃げたくなる気持ちもわからなくはない。
「……私も杏さんと同じことを感じたことはあるっす。初めて描いた同人誌……ノリノリで世に出したっすけど、今思うと恥ずかしいっす。あんなソフトな表現じゃなくて、もっとがっつり描きたかったっす!」
「おどれはなんか違うじゃろう!?」
「同じっすよ!」
「そうかのぉ!?」
銀子も銀子で黒歴史は持っているようだ。
人間、誰でも振り返れば恥ずかしく思う過去などあるものだ。
気にしていても過去はかわらない。
こんなこともあったな、と笑い飛ばせるくらいが健全だ。
「……でもさ、杏がこのまま目を覚まさないと誠司おじさんに迎えにきてもらうことができないんじゃないかな」
「確かに。いっそ事故にでもあって軽傷だがショックで眠っているって感じで時間を稼ぐか?」
「それでも数日っすよ。限界があるっす」
「引っ叩けば目覚めるんじゃない?」
「虎童子……女の子は繊細なんだぜ。さすがにそれはない!」
「しょぼーん」
「あ、そうじゃ! ゴッドパワーで強制的に起こすとか、記憶無くさせるとかすればええじゃろう!」
「小梅さん……ゴッド的にはそういうのはNGです」
「なんでじゃ!」
「人の心は、その人のものです。いくらゴッドでも、触れていいものではないのですよ」
「じゃあ、どうせい言うんじゃ!」
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「あ、すみません! リリスさん! バニラアイスと、チョコレートアイスと、抹茶アイスください! あと、シフォンケーキも!」
話に参加せずメニューを睨んでいた夏樹は、無事注文が決まりリリスに声をかけていた。