軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10「ファンタジーは秘匿が基本じゃね?」

ゴッドのいるリリスの喫茶店「最初の妻」に向かう途中のコンビニで、夏樹たちは一登と合流した。

「一登ちーっす!」

「夏樹くん、ちーっす!」

いつものように軽く手を上げて、ハイタッチ。

まだ別れて三時間を過ぎたくらいだが、一登が元気そうで夏樹は安心した。

「んじゃ、ゴッドのところ行って困ったちゃんを回収して、山に埋めますか!」

「埋めちゃダメだからね!?」

「めんご、めんご。沈めるんだったね」

「なんで!? あれー? なんかいい感じに連れて帰るってことで話がまとまったと思うんだけど!?」

「ユウシャ、ナニモオボエテナーイ」

「どうしてカタコトなの!?」

「うぇーい!」

「うぇーい!」

再びハイタッチする幼馴染みふたり。

「……やべぇ、いろいろあって疲れたおっさんは中学生のノリについていけねぇ!」

「ダメじゃのう、千手よ。俺様はぴちぴちじゃから問題ないんじゃがのう!」

「……小梅さん小梅さん、本当に若い子は自分のことをぴちぴちなんて言わないっすよ!」

「…………」

「おい、どうするんだよ! この天使黙っちゃったぞ! あたい、まだこいつらのノリに慣れてないからツッコめねえよ!」

中学生の高いテンションで夜も元気な夏樹と一登。

対して、千手は兄の襲来や弟との再会で疲れてしまっていた。

自称ぴちぴちの小梅は、銀子の指摘を受けて、唇を噛んで黙ってしまった。

まだこの面々と付き合いが浅い虎童子はどうしていいのかわからずに困惑するだけ。

これからゴッドに会いにいくとは思えないノリだった。

「ちょっと真面目に話をすると、ファンタジー関連をあの子が他の子に口にするかどうかなんだよねぇ」

「おじさんもそうだけど、おばさんにもファンタジー関連は伝えたくない、よね?」

「そりゃね。って言っても、うちのお母さん以外、家の中ファンタジーだけどね! なんなら宇宙的要素も入っていて、もうなっちゃん困っちゃう!」

「……真面目な話が三秒しか持たなかった」

実際問題として、綾川杏が心を入れ替えていようとなかろうと、何かの拍子で家族にファンタジーの存在がバレてしまうのはよろしくない。

実際にファンタジーに身をおいているからこそ、知らなくていいのなら知らないほうがいい。

夏樹自身、ファンタジーのおかげで小梅たちに会えたので、結果としては良しとしているが、ファンタジーに関わったせいで不幸になる人間は絶対にいるだろう。

綾川杏が、今後、どのような未来に向かうかどうかわからない。正直、興味もない。それでも、知らなかったほうがよかったと思う。

「……五円玉を紐にくくりつけて……催眠術で記憶を消せないかな?」

「あのさ、消すにしてももっとちゃんとした方法でやろうよ! なんでそんなレトロな漫画に出てきそうなノリでやろうとするのかな!?」

「それしか知らないからだよ! あとはジャックに宇宙的技術で脳をどうこうしてもらうとか」

「……後遺症はないよね?」

「知らない!」

「じゃあ駄目だよ!」

杏の扱いは、夏樹と一登でかなり違う。

夏樹は、異世界から生きた状態で連れて帰ってきたのであとは頑張って、ただファンタジーを漏らすなよ、と。

一登は、彼女のこれからを心から案じている。

その差は大きい。

「じゃあゴッドだ! ゴッドのゴッドパワーでなんとかしてもらおう!」

「……うーん、今の杏なら大丈夫だと思うんだけど」

「アマイモンとガープ、アテーナーさんもそういうけど、俺はあの子が変わったところを見てないからなんとも言えないよ。俺にとって、あの子よりも、一登やお母さんたち家族の方が大事なんだからさ」

夏樹にとっての優先順位と一登にとっての優先順位は違う。

違いは仕方がない。

どちらがいいとか悪いとかもない。

それを判断できる者はいないのだ。

「……だけど、一登が悲しむような結果にならないようには協力するよ。べ、別に一登のためなんだからね!」

「……夏樹くん、ツンデレ失敗しているよ? でも、ありがとう」

夏樹と一登は肩を組み、ゴッドの元へ向かう。

千手たちも追いかけた。

「……ぴちぴちじゃもん」

きゅっ、と唇を噛んだ小梅もとぼとぼと後に続いた。