作品タイトル不明
5「千住さんの兄じゃね?」③
「い、いつまでも強気でいられると思うなよ! 父上も停止から目覚めている! 私と同じようにビッグウェーブに間に合わなかった恨みが貴様にあるだろう! 貴様は間違いなく七森家を敵に回したのだ!」
「あー、そーですかー!」
七森家は霊能力者としてそれなりに歴史があり、それなりに強い霊能力者を輩出した家であり、権力もあるようだが、ここ最近、規格外な人間や神や魔族を見ているせいで何も怖くない。
「そうやって舐めるのも…………」
千手の態度にまたもや憤りを感じていた英智だったが、身体がぴたり、と止まる。
「あん?」
なんだ、と千手がどうしようと悩んだ少しの間に、英智は動き出した。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
自身を縛っていたロープを引きちぎったのだ。
霊力まで封じたわけではないので、不思議ではない。
身構える千手と、拳を握る虎童子――を無視して、一目散に公園のトイレに飛び込んでいった。
「あー、ビッグウェーブがきちゃったのね」
「……ダーリン、もう放って帰らない?」
「帰るつーか、由良のところにそろそろ行かないとな」
由良たちもそろそろ動き出す時間だろう。
携帯を見ると、そろそろ家を出ると夏樹から十分前にメッセージが入っていた。
「まあ、放っておいて害のある奴でもないし、行くか」
「うん!」
「待てぇえええええええええええええええええええ!」
「マジでうぜぇ!」
ハンカチで手を拭きながらトイレから出てきた英智が、この場を去ろうとする千手たちに向かい走ってきた。
「うわぁ、なんか知らないけど、血走った目をしたおっさんがこっちに向かって走ってくるんですけど! しかもパンイチ! やばくね! やばいよね!」
「――由良ぁ!? お前、どこから生えてきたの!?」
「いつの間に!? 全然気がつかなかった!」
なぜか由良夏樹が千手たちの隣にいた。
驚く千手たちに対し、夏樹は迫り来る英智を見て拳を構えた。
「千手さん、俺に任せてくれ! こんなやべぇ奴を俺が愛する向島市に野放しにはしないさ」
「あの、あれは一応な」
「大丈夫! 俺の心配はしないで!」
「お前の心配なんてしてねえから! そうじゃなくて、あれは、俺の」
千手が止める間もなく、夏樹は地面を蹴った。
「いや聞けよ!」
千手の声が響くが、もう遅い。
夏樹は英智の眼前にいた。
「な、なんだお前は!?」
「ひぇ、パンイチのおっさんが血走った目をして突撃してくる!? 一般人のなっちゃんは怖くて怖くて、ギャラクシー勇者まもんまもんフォーエバーエクスプロージョンカッパッパーブラウントラウト――チョップ!」
「ひぐぅ!?」
いや、絶対お前怖がってねえだろ、という突っ込みができるはずもなく、夏樹の蹴りが英智の股間を蹴り上げた。
「うわぁ」
「ダーリンの兄貴が姉貴になったかもしれない」
「やめて!?」