作品タイトル不明
4「千住さんの兄じゃね?」②
「だからそういうこと言わないで! 俺はこいつに散々いじめられたんだぜ」
「――貴様っ! 確かに俺は貴様が不愉快でいじめもしたが、十分にやり返していただろう!」
「なんのことだか」
「お前のせいで、当時付き合っていた恋人から人間のクズ扱いされて振られたんだぞ!」
「人間のクズじゃねえか」
「貴様さえ、貴様さえ! へぶっ!」
言葉の途中で、英智の顔面を虎童子が殴った。
手加減はしているのだろうが、鼻が折れて血が出ている。
「ダーリンをいじめるたぁ、いい度胸だ。表に出ろ!」
「表だよ! くそっ、千手! 貴様、霊能力者でありながら鬼と相思相愛とは!」
「……ダーリン、もしかしてお兄様は善良な方なんじゃ」
「なんでそうなるんだよ! これはどっちにも言ってるからな! 二人同時に突っ込ませるんじゃねえよ!」
因縁のある兄と話をしているのだが、どうもシリアスにならない。
千手は頭痛を覚えた。
「……千手……お前が七森を名乗っているのは、やはり七森家の当主を狙っているからだろう」
「ふざけんな。お前らクソみたいな一族の当主の座なんかいるわけねえだろ」
「ならば! なぜ昔、当主になると言ったんだ! 私と姉は、その言葉を聞いたからこそ」
「待て待て待て、俺がいつ、どこで、当主になるなんて言った!?」
まるで心当たりがないことを言われてしまい、千手は困り果てる。
幼い頃から、一度として七森家を継ぎたいなどと思ったことはない。
むしろ、早く出ていきたいと思っていたくらいだ。
「使用人たちに言っていただろう! 立派な当主になると!」
「馬鹿野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおお! それは投手違いだぁああああああああああ!」
「なにを」
「ピッチャーだよ! 野球チームの立派なピッチャーを務めるって話をしていたんだよぉおおおおおおおおおおおお!」
「なん、だと」
英智は愕然とした。
そんな兄の顔に千手は足の裏で思いっきり力を入れる。
「大きな間違えをしたことに気づいた顔をしているところ悪いんだが、それを抜きにしてもてめぇは散々俺をいじめてくれたじゃねえか。愛人の子を認められねえのはわかる。だが、それを俺に言っても仕方がねえだろ。俺が浮気して産んでくれと頼んだわけじゃねえんだよ!」
今までの鬱憤もあったのだろう。
繰り返し兄の顔を足蹴にした。
「ま、待て、お前も十分やり返していただろう!」
「だからっててめぇがやったことがなくなるわけねえだろ! 俺はてめえが無様に死ぬまで一生呪ってやるから覚悟しろ! 次、便所にはいる時は気をつけろよ。制御できるようになった魔眼でちゃんと全力で停止してやるからな!」
顔を近づけて威圧する千手に、英智は怯えた顔をした