軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「生活費って大事じゃね?」

魔王サタンは由良家の茶の間で、おやつのアイスを食べているリヴァイアサンことリヴァ子に話しかけた。

「リヴァイアサン……俺さ、魔王やめて動画配信者になろうと思うんだ」

「ぶぅうううううううううううううううううううっ!?」

バニラアイスを吹き出してむせ込むリヴァ子が、ティッシュで口元とテーブルを拭いてサタンを睨みつけた。

「小梅がいない間にこっそり買った高いアイスを吹き出しちゃったじゃない! なに言ってんの!?」

「そろそろ俺も普通の男の子に」

「男の子って歳じゃねえだろ! 外見も普通におっさんじゃねえかよ! ちょいワル系の親父が自分のこと男の子とか言うなぁ!」

「男の子はいつだって男の子なんだよ。たとえおっさんになってもな!」

きりっ、とした顔をしてしょうもないことを言うサタンに、リヴァ子は大きなため息をついてアイスの続きを食べ始めた。

「ちょっと、無視しないで! 構って!」

「構ってとか言うなよー! というか、なぜ動画配信者になろうなんて思ったんだよー!」

「リヴァイアサンって……春子さんにこの間生活費を渡していたじゃん?」

「あ、うん。ていうか、普通は渡すでしょう。僕の場合は、ネット環境も良いものに切り替えてもらったし、時間があればパソコン使っているから電気代もかかるし。食費だって、ねぇえ」

海獣リヴァイアサンは、七つの大罪に連なる魔族だ。

神が作った獣であり、その強さは凄まじい。

現代では、男の娘であり、動画配信者であり、由良家の長女ポジに居座っているが、常識はちゃんと持っていた。

「……俺も生活費を渡そうとしたんだけどやんわり断られちゃった」

「あのさぁ、魔王に常識を説くのもどうかと思うんだけどさぁ……生活費ですって金の延べ棒渡して受け取ってもらえるわけないじゃん」

「なん、だと」

「しかも、なんとか王朝の印が入ったちょっとした遺産レベルのもんをどこで換金しろって言うんだよ。普通にマネー渡せよ、マネー!」

「延べ棒の後に渡したよ!」

「だーかーらー、ドルで渡すなよ! しかも札束で! 換金するのが一苦労だろー!」

「だって、今はドルの方が高いんだもん!」

「そう言う問題じゃねえよ! すぐに使える福沢さんか渋沢さんを渡せって言ってんだよ!」

至極真っ当なツッコミを受け、サタンは財布を取り出し中身を見た。

「……聖徳太子ならあるけど」

「古いよ! 使えるんだろうけどさー、レジの機械で認識してくれないんじゃないかな!?」

「……どうすればいいんだ!」

「普通に銀行行ってお金おろしてこいよ。もしくは、渡そうとしたドル札を換金してこいよ」

「――その手があったか!」

「他の手なんてないからー! この手しかないからー! やだ、こんな魔王! 今からサマたんに変わってもらえよー!」

サタンはかっ、と目を見開き財布とお買い物バッグを持って立ち上がる。

「まだ銀行には間に合うな! ついでに異世界から帰ってきた小梅たちが腹一杯食べられるように食材買ってくるぞ!」

「晩御飯は何にするの?」

「――寿司だ!」

「待って、寿司で食材買ってくるって……まさか」

「そう! 握るぜ!」

きりっ、とした顔のサタンはふりふりのエプロンをつけたまま買い物に出かけた。

一時間後、肩を落としたサタンが帰ってくる。

聞かずとも銀行に間に合わなかったし、食材も買えなかったことがわかった。

「近所の松本さんに捕まって話をしてたら銀行閉まっちゃった」

「近所のおばちゃんに勝てない魔王ってどうよ」

「おばちゃんほど強い存在はいないから!」

――割と向島市も平和だった。