作品タイトル不明
105「アポローンさんの忠告じゃね?」③
「どうしてヒンドゥー語で叫んだのかわからないが……ま、そんなわけで、僕はしばらく太陽の神を封印しなくちゃならないからね。なっちゃんが生きている間に会うことはないだろうね」
「……戦わないの?」
「僕をはじめ、複数の神が神力が空になるまで封印することを繰り返しているんだ。まず、無理だね」
「……マジかー」
「マジだよ。封印の要は百年近く持つんだけどね、補佐する神々は数年で神力がスッカスカさ」
太陽の神がどれほどの神なのかわからないが、複数の神々が共に封印しなければならないというだけで強力な力を持つのだとわかる。
「新たな神々の中には太陽の神を解放しようと躍起になっている勢力もいるんだ。絶望の神も、解放するためにいろいろ動いていたね」
「……あの愉快なぜっくんにもちゃんと行動理由があったんだねぇ」
「ははは。あれはあれで、刹那的な快楽に弱いけど、まともな部類だ。他の、新たな神々はもっと醜悪で気持ちが悪い奴らばかりさ。気をつけてね」
「うん。ありがとう」
「――本当に気をつけてね」
「念を押すなぁ! なんかフラグに聞こえてきたんだけどぉ!」
本当に心配そうな顔をしたアポローンに、夏樹は不安になった。
「月の神は月読命が倒したけど、海の神、空の神はまだいる。太陽の神が群を抜いて……いや、新たな神々が集まっても勝てないほど力があるけど、他の神も厄介だ。くれぐれも、くれぐれも……ね」
「もうフラグどころか予言にしか聞こえなくなってきた」
「なっちゃんは海の勇者で、星槍を持っているからね。星槍が司るのは空だろう?」
「……もしかして、見てた?」
「見ていたよ」
どうやらアポローンは、夏樹とアマイモンの戦いを見て蒼穹の星槍の力を把握しているようだ。
この神は、どこまで把握したのだろうか。
もしかしたら対策もできるかもしれない。
「なっちゃんと戦えないのが残念だ。もっと成長してもっと強くなって、もっともっと面白くなりそうだったのに」
心底残念そうな顔をしたアポローンは、「そろそろ時間だ」と夏樹に背を向けた。
「じゃあね、なっちゃん」
「行くの?」
「うん。役目を果たさないとね。――ばいばい」
「――ばいばい」
振り返ったアポローンが手を振る。
夏樹も手を振り返した。
刹那、アポローンの姿が消える。
まるで最初からいなかったように、彼は痕跡を何ひとつ残さなかった。
「ごめんな、なっちゃん。アポローンがどうしても会いたいって言うから」
「それはいいんだけど。あれだけヤバそうなアポローンくんが封印するしかない太陽の神って……やばくね?」
「やばいぜぇい。何がやばいって、俺っちも含めて太陽の神の何がヤバいのかわからねえっていうのがヤベェ」
「なにそれ」
「神々、魔族の上層部以外には太陽の神がどんな存在なのかさえ知らないってことなんだぜぃ」
「うわぁ、やべぇ」
「――だけど」
「うん?」
ガネたんは、夏樹を見て呵呵と笑う。
「なっちゃんなら太陽の神だろうとなんだろうとぶっ殺しちゃいそうだけどなぁ」
「やだなぁ。ギャラクシー河童勇者さんは無駄な戦いはしないよーん」
夏樹はガネたんを肩を組む。
アポローンのことは気になるし、気が合いそうだった。
だけど、新たな神々に夏樹から関わるつもりはない。
「俺はもう一生分戦ったから、地球でのんびりしよーっと」
「……と、この時なっちゃんはまさかあんなことが起きようとは思いもしなかったんだぜぃ」
「やめてくれる!? アポローンくんもガネたんもフラグ立ったらどうするの!?」
そんな軽口を言い合いながら、夏樹とガネたんは地球に帰った。
――もちろん、フラグは立っていて、後日「新たな神々」と夏樹が激突することになるとはさすがの夏樹もこの時は思いもしなかった。