作品タイトル不明
99「さよなら、じゃね?」
夏樹たちの異世界最終日の早朝。
魔王城の中庭に、身だしなみを整えた学生服スタイルの由良夏樹と愉快な仲間たちと敵対したけどきっと仲間ポジになるんだろうなアマイモンたちが並んでいた。
すでに河童さんたちはひと足先に地球に転移しているのでこの場にはいない。
「はい。じゃあ、数日間お世話になった魔王ギーゼラ・シラーさんと魔族の皆さんにご挨拶をしましょう!」
スーツに眼鏡姿の引率の先生スタイルの千手がはきはきした声を出す。
夏樹たちは元気一杯に、挨拶した。
「魔王さん! 魔族さん! お世話になりました!」
「う、うむ。こちらこそ世話になった。この出会いに感謝しよう」
一同がお辞儀をする。
ノリがいいのか、アマイモンやアテーナーたちも一緒にお辞儀をしてくれる。
戸惑った顔をしているギーゼラと魔族の幹部たち。
四天王も見送りに来ているが、なまはげよろしく恐れられていることもある夏樹の帰還に彼らの顔は見てとれるように嬉しそうだった。
「よーし! 忘れ物はないな? 譲ってもらった武器、武具のお礼はちゃんと言ったな?」
「はーい、千手先生! 問題ないです!」
夏樹が元気よく返事をする。
千手は頷く。
「では、義政校長先生のお話だ。ちゃんと聞くように! 校長先生、お願いします」
「わかりました」
眼鏡をくいくいしながら、義政がクーラーボックスの上に立った。
「おはようございます。異世界での朝も今日が最後だと思いと寂しいものがありますね。魔王ギーゼラ・シラー様をはじめ、多くの魔族さんたちと出会いました。この出会いは間違いなく私たちの良き経験となるでしょう」
義政は夏樹たちを見渡すと、魔族たちに顔を向ける。
「魔族さんたちはまだ戦いが続くでしょう。世界は違えど、我々は友人です。遠く離れた場所からでも、あなたたち魔族が戦いに勝利し、豊かな国を作り、繁栄していくことを心から願いっています」
「――ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています。どうぞ、お元気で。では、みなさん。魔族さんたちに、この異世界に最後のお別れをしましょう」
「はい!」
義政がギーゼラたち魔族に礼をした。
「さようなら!」
「さよーならー!」
「あ、ああ、さようなら。あなたたちも元気で!」
最後の別れの挨拶を交わすと、夏樹たちを眩い光が包んだ。
ゴッドの力だ。
夏樹たちを異世界から地球に移動させるために光だった。
「じゃあね、ギーゼラさん、ラーラさん、グランドルさん、オッくん、フェイリスさん! 四天王たち、俺が帰るからって泣き笑いながら万歳すんじゃねえよ!」
夏樹が大きく手を振ると、みんなも手を振った。
「――ギーゼラ、ラーラ! 元気でね! 幸せに!」
「母上も、どうかお幸せに!」
「元気でね!」
ソーニャも娘と孫と挨拶を交わした。
――そして、眩い光が魔王たちの視界を白く塗り上げる。
光が収まると、まるで最初からいなかったのではないかと思えてしまうように、夏樹たちは誰もいなかった。
「――まるで夢のような出来事だった。敵として戦い敗北した勇者と共に戦うなど、誰が思っただろうか。何よりも、あの感情のなかった勇者が子供のように表情を変える姿を見てどこか安心してもいる」
ギーゼラは、冗談みたいな登場をして、冗談みたいな帰還をした夏樹たちに苦笑を浮かべた。
だが、すぐに表情を引き締める。
「――さあ、我が民よ!」
ギーゼラが声を張り上げると、魔族たちが跪く。
「我々の戦いは続くぞ! 遠い地の友に恥じぬよう、勝利を収めようではないか! 人間を倒し、魔族の世界を作ろう! 我々の理想郷を目指そう!」
「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
――三年後。
――魔王軍はブレイバーズ王国をはじめ、人間の国々と戦い続け勝利した。
――生き残った人間は少ないが、魔族は彼らを根絶やしにはしなかった。
――だが、かつて彼らがそうしたように、人間は労働力として使われていくことになる。
――それでも、人間がしたように、彼らを虐げる魔族はひとりとしていなかった。
魔王ギーゼラ・シラーは、この後、三百年世界の平和を維持し続ける。
その後、後継者として大きく成長したラーラ・シラーに魔王の座を引き継がせることになるのだが――それたまた別のお話。