作品タイトル不明
98「姉妹じゃね?」
異世界の夜空に師匠との別れを叫んだ夏樹だったが、前を向いて歩むことを続けることにした。
導いてくれた師匠の教えを無駄にしないためにも、未来へ進み続けるのだ。
「――見ていてください、師匠。俺は立派な勇者になってみせます!」
「……とっくに勇者な気がするんだけど」
「この子ってどこか変じゃない?」
星空に誓う夏樹に、星槍さんと名無しが冷めた視線を向けていた。
「名無しさん、君も一緒に地球に来てくれるよね?」
「うん。お世話になります」
「んじゃ、星槍さんの妹ってことでよろしく」
「――は?」
夏樹がお願いすると、名無しの顔からもともとなかった表情がさらに消えた。
「……私が、この女の妹?」
「駄目? だって、幼女だからお姉さんってわけにはいかないと思うんだけど」
「幼女じゃないから! 力を抑えているから姿も幼く見えるのよ! 実際は、ばいんばいんなんだから!」
「あー」
ジェスチャーでボディーラインを主張する名無しだったが、夏樹は星槍さんの一部を見て一言。
「さすがにそれは無理じゃね?」
「――あんた、今、私見てから名無しを否定したけど、どこ見て何を思ったのかいってみ? ああ?」
女性は男の視線に敏感だというのは本当だったらしい。
夏樹の視線に気づいていた星槍さんが、夏樹の襟首を掴んで持ち上げる。
「ちょ、ま、ギブギブ! 締まってるからぁ!」
「他に言うことあるでしょう?」
「ごめんなさいっ!」
「よし!」
「あ、ありがとうございます」
解放された夏樹は、地面に尻餅をついて喉をさする。
「あー、死ぬかと思った」
「大袈裟ね。ま、いいわ。じじぃも見送ったことだし、そろそろ寝ましょう」
「星槍さん……もうちょっとしんみりというかなんというか」
「何言ってんのよ。あのじじぃが長くないことは夏樹だってわかっていたでしょう?」
「そりゃ、ね」
老人――翔・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星が強いことは見ればわかった。
一挙一動が強者の「それ」だった。
魔力があり、力があり、しかし生命力だけが感じられなかった。
師匠は「もう死んでいる」と言ったが、夏樹もそのことは察していた。
「ま、あんたはあのじじぃの言うように頑張って生きればいいんじゃない?」
「そう、だね」
「って、わけで寝るわよ。夜更かしはお肌に悪いんだから、ほら、さっさと行くわよ」
「うっす!」
「愚妹! あんたもほら!」
「ちょっと、いきなり妹扱いしないでくれます? しかも、愚妹って……こんな美少女捕まえてなんたる暴言」
「どうでもいいわ」
「こ、この、いつかばいんばいんになって姉の座を奪ってやる」
「名無しさんの目指すところってそこでいいの!?」
姉ポジションを狙う名無しに、「この子もちょっと変わっているなぁ」という感想を抱く夏樹だった。
――この後、めっちゃ爆睡した。