作品タイトル不明
96「ゴッドと電話じゃね?」②
「夏樹くんだけではなく、皆さんにはたくさんお世話になりました。この世界も安定こそ少し時間はかかるでしょうが、もう異世界人の召喚もできないでしょう。それだけの魔力がありません」
「え? そうなの?」
夏樹は驚いた。
異世界召喚がもうできないのであれば、人間は魔族に絶対に勝つことはできないだろう。
どういう理屈で異世界召喚がされているのか知らないし、興味もないが、人間にその技術がなくなったことは喜ばしい。
「夏樹くんがアマイモンとの戦いで力を取り戻すのにこの世界の魔力を大きく消費したでしょう?」
「あー。そういえばアマイモンが止めよとしていた気が」
「その時の魔力消費が凄まじかったんですよ。夏樹くんが戦いの後に魔力を戻せばまた話が違ったのですが、アマイモンの復活に魔力を消費したでしょう? 結果、この世界の魔力はかなり薄くなりました。魔族もですが、魔族以上に人間は魔法を使い辛くなるでしょう」
「へー」
そりゃ大変だと思うが、もうこの世界にはくるつもりはないので正直どうでもいい。
人間が魔法を使えないのはいいことだ。
魔法を使えない者に使える者が酷いことをする場面を何度も見てきた。
まともじゃない種族は、攻撃手段を持たない方がいい。
魔族たちには、申し訳ないが、基本スペックは人間以上であり、一致団結している。
魔法が絶対に使えないわけではないので、頑張って欲しい。
「というわけで魔力不足なので召喚術は使えないでしょう。おそらく、二度と」
「ざまーみろー! ていうか、そもそも自分たちが勝てないからって承諾もなしに別世界から人を誘拐するなって話ですもんね」
「……夏樹くんの場合は、中学二年生でしたものね。聖剣の使い手を呼んだという意味では間違っていないですが、この世界の人間の勝手で子供に戦いを強いるのは良いことではありませんね。私が言えることではありませんが」
「気にしないでくださいよ、ゴッド。俺は俺の意思で戦ってますから。ゴッドに頼まれたから戦っているわけじゃないんです」
「――ありがとうございます」
ゴッドとは、それから少し他愛ない話をした。
何やらリリスさんがアップを始めたとか、向島市は相変わらずとか。
今日はもうみんなが寝てしまったので翌朝に地球に戻るということも決めた。地球ではまだ一日も経っていないようで、夕方くらいの帰宅になりそうだ。
夏樹は安堵する。
母に無断外泊をしたと知られたらどれだけ怒られるのか、と不安だった。
想像以上に時間が融通きいたことに感謝する。
「そうそう、夏樹くん。君のスマホですが――手を出してください」
電話越しにそう言われ、スマホを持っていない左手を出してみる。
すると淡い光に包まれ、夏樹のスマホが手の上に現れた。
「拾っておきました。――大事な中身が消えてしまうのはきっとショックでしょうし。万が一、この世界の者が拾って技術を理解してしまっても困りますので」
「ありがとうございますっ! さすがゴッド! さすゴ!」
「いえいえ、それほどでも――あります!」
愛用していたスマホには、大事なデータが入っている。
この世界で撮った魔族さんとの写真や動画もたくさんある。
個人的にいろいろ集めたものもあるのだ。
「それでは、また明日」
「はい。また明日」
挨拶を交わし、通話を終える。
意外と話をしてしまった。
自分も早く寝よう。
夏樹が中庭に戻ろうとした時、背後に気配を感じた。
「星槍さん、名無さん、それに師匠?」
「ほっほっほ、まさか管理者殿と気さくに連絡が取れるとは……やはり坊主――いや、夏樹は面白い子だのう」
「偶然が重なった結果ですよ」
「その偶然を大事にしなさい。きっと夏樹にとって良いことであろう」
「はい! ところで、どうしたんですか? 三人が揃ってくるなんて」
夏樹の師匠である老人は、皺のある顔に優しい笑みを浮かべた。
「お別れを言いにきたのじゃよ」