作品タイトル不明
95「ゴッドと電話じゃね?」①
祐介とソーニャを祝うために、アイテムボックスの酒はすべて消費された。
魔族だけではなく、河童さんたちもみんなで楽しい時間を過ごした。
酔っ払ったみんなもぐーすか寝息を立てている。
アマイモン一派も、数時間前まで戦っていたとは思わないほど溶け込んでた。
楽しい時間だった。
酒は飲まずとも、場の雰囲気に酔いかけていた夏樹は、戦場で落としたスマホの代わりに小梅のスマホを借りてゴッドと電話していた。
「あー、どうもー。なっちゃんでーす」
「これはこれは、夏樹くん。みんなのゴッドです」
お互いに軽い挨拶を交わす。
いつもならここで談笑するのもありだが、夏樹は本題に入った。
「いくつか言いたいことがあるんですが」
「――ソーニャ・シラーさんのことなら問題ありませんよ」
「……話が早いなぁ」
「ゴッドですから」
スマホの向こう側でドヤ顔をしている雰囲気が伝わってくる。
「地球にもエルフやダークエルフをはじめとする種族はいます。人間たちが知ることはまずないのですが、はい」
「ほえー」
「ダークエルフという種をすべて地球に転移させるのであれば、反対しなければなりませんでしたが、ソーニャさんだけならば特に問題はありません。佐渡祐介くんの心の支えになってくれる重要な方です。ゴッド的にも彼には負い目があるので歓迎しますよ」
「ありがとうございます」
夏樹は素直に感謝した。
ゴッドならば断らないと信じていたので、断られた時のことを考えていなかった。
「それで、河童さんたちも」
「はいはい。もちろんです。元は地球の河童さんたちですからね。どちらかと言うと、残りたいと言われた方がゴッド的には困りました。なんせ、そちらの世界の本来河童はいませんので」
「なるほどー」
「そう言うわけですから、河童さんを見つけてくださったことにも感謝します」
「いえいえー」
河童さんに関しても問題はないようで安心する。
「名無しさんですけど」
「あー、はい。ギリギリですが大丈夫です。ですが、わかっていますよね、夏樹くん」
「……ええ、まあ」
「君の得た力は強く、まだ限界ではないのです。どうか、力を使うタイミングを誤らないでくださいね」
「うっす!」
最後に、アマイモンたちに関しての話だ。
「アマイモンたちは、絶望の神を利用しただけであって、別に味方だったわけじゃないんでお咎め無くしてもらえると」
「アマイモンたちに関しては、他ならぬ戦った夏樹くんがそういうのであれば、見逃しましょう。実際、君の言葉通りですので」
「どうもっす」
「複数の神や魔族からも嘆願が届いていますので、大事にしないつもりではいました」
ホッとする。
アマイモンとは命をかけて全力で戦った中だ。
絶望の神サイドにこそいたが、味方をしていたわけではない。
甘いだろうが、お目溢ししてもらえるのはありがたい。
「でも、ひとつだけ」
「聞きましょう」
「――なぜ、あの時、アマイモンを助けてくれなかったんですか?」
かつて小林蓮と戦ったとき、夏樹は容赦無く斬った。
結果として、彼は死を迎えるはずだったが、ゴッドによって事なきを得たのだ。
だから、今回もゴッドがアマイモンをなんとかしてくれるのではないかという期待があったのだ。
だが、これは夏樹のわがままな意見だ。
ゴッドには、アマイモンを助ける理由がなかったのだろう。
それでも、一度は聞いておきたかった。
「……夏樹くんはアマイモンに死んでほしくなかったのでしょうが、アマイモンは肉体の限界がきていたので戦いの最中で死にたかった。どちらの願いも知っていたので、私は中立として介入しませんでした」
「そう、ですか」
「たくさんの借りがある夏樹くんの願いを叶えるべきだったのかもしれませんが、アマイモンがあの場で生き延びることが救いかどうか、私は判断できかねたのですよ」
アマイモンは戦いの中で死にたかった。
夏樹は、中途半端な戦いが嫌だった。
ゴッドはあくまでも中立だった。
それだけのことだ。
「……しかし、夏樹くんと戦い、名無しさんが救ったことでアマイモンは絶望したわけでも、死ななかったことを悲しんだわけではない。新たにまた強くなろう、と新たな一歩を踏み出しました。私などおらずとも、君が君なりに出した答えが良い方向に進んだのです。今後も迷わず、君は君らしく一歩一歩進んでくださいね」
「……はい」
ゴッドの言葉に夏樹は素直に頷いた。