作品タイトル不明
93「祐介くんが頑張るんじゃね?」③
「――本気か?」
ギーゼラの問いに、祐介は顔を上げた。
「――はい!」
「き、君は、母に子作りがどうこうと叱咤されたようだが」
「はい! ですから、ソーニャさんと幸せな家庭を作りたく! 魔王ギーゼラ・シラーさん、ラーラ・シラーさんにご挨拶させていただきたく!」
「お、おおう」
ハキハキと自らの意思をしっかり告げる祐介に、ギーゼラは押され気味だった。
「……とりあえず、立ってほしい。膝をついたままでは話ができない」
祐介の本気が伝わったのか、ギーゼラは手を差し伸べる。
彼女の手を握り、立ち上がった祐介は真剣な顔をして改めて頭を下げた。
「ソーニャさんはずっと俺を支えてくれました。命も救ってもらいました。心も救ってもらいました!」
「優しくされたことで気持ちを勘違いしているのではないだろうか? 母は誰にでも優しいぞ」
「いえ、この気持ちは本物です。確かに、まだ僕の心に生まれたばかりの感情ですが、本物です。今日、この世界を去る身として、想いを伝えなければ後悔してしまう」
「ほう」
祐介は真摯に言葉を紡ぐ。
彼の目は本気だった。
それは、見守っている夏樹たちでもわかる。
今の彼は、魔族大好き祐介くんではない。
ソーニャ・シラーを愛する男、佐渡祐介だった。
「母は了承しているのか?」
「え? でも、子供を産んでくれるって」
「……少し誤解があるようだな」
ギーゼラは、短くため息をつく。
「母上。佐渡祐介はこう言っているのだが、どうする?」
夏樹たちの視線がソーニャに向く。
メイド服を着た褐色の肌の幼い外見のダークエルフ、ソーニャ・シラーは口元に手を当てて顔を真っ赤にしていた。
「わ、私は、祐介の子供を産んでやろうと思った。たくさん辛い経験をしていたことも知っているし、女に苦手意識もあるようなので、癒してやりたかった。だけど、まさか、結婚しようと思ってくれるなんて」
ソーニャは感涙した。
察するに、彼女は祐介と一夜の関係と割り切ろうとしていたらしい。
だが、祐介は違った。
行きずりの関係ではなく、きちんと関係を持ちたい。
子供ができる行為をするのならば、それ相応の関係を築くべきだと考えたのだ。
祐介はソーニャに好意を抱いている。
ソーニャも祐介に好意を抱いている。
ならば、ふたりの関係はもっと深く大切なものになるべきだ。
「――ソーニャ・シラーさん。僕と恋人になってください。そして、結婚してください!」
「――はい!」
「そして、一緒に地球に来てください!」
「――喜んで!」
――佐渡祐介に春が来た。