作品タイトル不明
92「祐介くんが頑張るんじゃね?」②
魔王ギーゼラ・シラーは戸惑っていた。
これほど心をかき乱されたのは、魔王軍を半壊させた殺戮勇者がフレンドリーになってひょっこり戻ってきた以来だ。
勇者由良夏樹の友人である勇者佐渡祐介が、母ソーニャ・シラーと結婚させてくれと言ってきたのだ。
そりゃ、驚く。
(……一部の魔族たちもだが、なぜ母をソーニャたん呼びするのだ? たん、とはどう言う意味なんだ?)
混乱しているせいか、思考が乱れる。
(た、確かに今まで母と結婚したいという者はいた。というか、多い)
幼く見える母だが、自分を産み、孫娘ラーラもいる。
短い時間の結婚生活だったことは知っている。
以来、母は結婚していない。
そんな母が幸せになってくれることをギーゼラも願っている。
今回の人間との戦いで魔族は勝ち、ブレイバーズ王国を追い詰めた。
また由良夏樹のような規格外が勇者として召喚されない限り、ここから巻き返されることはない。
数年もかからず、魔族は人間に勝つだろう。
そうなれば、あとは平和な国を作り直すだけだ。
母だけじゃない。
民にも幸せになってほしいと心から願っている。
(……母と結婚? 勇者が? いや、人間に差別意識はない。佐渡祐介は異世界人だ。この世界の人間と同じではないことは十分にわかっている。むしろ、ちょっと気持ちが悪いほど魔族が好きであることも知っているのだが)
母が戦場で佐渡祐介と子作りの約束をしたと聞いている。
何を言っているんだ、と思ったが、叱咤激励の一環だろうと思っていた。
だとすれば、彼は勘違いしてしまったのだろう。
可哀想ではあるが、ここはひとつ厳しく言うべきかもしれない。
由良夏樹だけではなく、佐渡祐介をはじめ地球の人間たちは恩人だ。
だからと言って報酬だと母を渡すことはできないのだ。
(瞳を輝かせ、期待している青年を無下にするのは申し訳ないと思う。おそらく、本当に母に好意を抱いてくれているのだろう。すまない)
内心、侘びながら断りの言葉を言おうとした。
その前に少しだけ、静かな母に視線を向ける。
(――んんん?)
母を見たギーゼラは、目を擦った。
(どうやら私は疲れているようだ)
ふう、と息を吐きもう一度母を見た。
(マミーめちゃくちゃ乙女の顔してるぅううううううううううううううう!?)