作品タイトル不明
91「祐介くんが頑張るんじゃね?」①
「なんだ、結婚するのか。若いのにやるじゃねえか」
ガープが祐介の背中を豪快に叩いた。
「大地の勇者佐渡祐介。君の力の一端を見た者として、奥方を守れる良い夫となるだろう。祝福する」
アマイモンも祐介に祝いの言葉を述べた。
「ありがとうございます! じゃあ、僕はご挨拶に行ってきます! 夏樹くん、みんなもできれば立ち会ってくれると嬉しいな」
「あ、うん。ヨロコンデー」
(どうなるんだよ、これ!?)
祐介の思い切りの良さに、夏樹は驚きを隠せない。
ただ、ひとりの男として、決断力と行動力は尊敬する。
大変な目に遭ってきた祐介だからこそ、幸せになってほしいと友人として心から思う。
(だけどさぁ、ギーゼラさんにどう言うのぉ? お母さんをください? 聞いたことねー!)
自分が子供なだけで、大人の恋愛には「お母さんをください」と子供に言うことがあるのかもしれない。
だが、夏樹は知らない。
円と澪と都に視線を送ってみるも、三人も困った顔をしている。
おそらく、今後の想像ができないようだ。
「夏樹さん」
「……義政大先生」
「愛というものは複雑なものです。どのような形があってもいいと僕は思っています。祐介さんとソーニャさんのこれからを祝福し、見守ってあげましょう」
「――っ、さすがです、義政大先生! 義政大先生はいつだって俺たちに人生の助言をくれます!」
「いえ、五歳の人生観など大したことはありませんよ」
眼鏡をくいくいする義政に、ガープが声を震わせた。
「……この子本当に五歳なのぉ? 中の人いないかなぁ?」
ガープの呟きは、急に吹いた風によってかき消された。
「どうやら異世界の風も僕とソーニャたんの未来を祝福してくれているね!」
祐介が気を引き締めて頷くと、魔王ギーゼラと娘ラーラの元へ一歩を踏み出した。
背後では、「うわ、ソーニャたんとか言っているんですけど、きもい」と都が素直な感想を口にして澪に「めっ」されていた。
事態がどう動くのかわからないので、夏樹たちも祐介に続く。
「――魔王ギーゼラ・シラーさん! 御息女ラーラ・シラーさん!」
盛り上がっているギーゼラたちに近づいた祐介が、声を出す。
大きな声に、何事かと一同の視線が集まった。
千手と東雲が、「まさか」と夏樹に視線を向けてきたので、「うん」と頷いておく。
ふたりが、ごくり、と唾を飲んで祐介に集中した。
「大地の勇者佐渡祐介か。……何やら随分とボロボロだが、平気か?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、僕は元気です!」
「そ、そうか、元気なら何よりだ」
衣類がボロボロだが、元気を通り越して変なテンションになっている祐介にギーゼラは不思議そうな顔をしている。
それはラーラも同じだった。
小梅たちは「なーんかはじまりおった」と余興くらいに思うことにしたようで、余計な口出しをしないと決めたらしい。
祐介はその場に膝をつく。
「……何を?」
続いて地面に手をつき、ギーゼラとラーラの顔を見て祐介は魂から声を出した。
「――ソーニャたんと結婚させてください!」
「………………は?」
「………………え?」