作品タイトル不明
90「アマイモンたちも合流じゃね?」
「ちょっと、私たちのことも待っていてくださいよ!」
「ごめんね、魔王城の中が楽しくて。ゲームの中にいる気分だった」
「お姉ちゃんが満足なら私も満足です!」
乾杯をしてからしばらくすると、水無月姉妹と円、義政がエルフたちと一緒にやってきた。
「まさか義政くんが隠し扉を見つけただけやなくて解錠までしてしまうなんて思いもせえへんかったわ。君、ほんま何者なん?」
「嫌だなぁ、円さん。あのくらい最近の幼稚園じゃ普通に習いますよ?」
「君、どんな幼稚園に通っとるん!?」
水無月姉妹は相変わらずで、円と義政も仲良くなったようだ。
「おーい、円ちゃーん! 義政先生! 都さん、澪さーん! エルフさんたちもカモーン!」
夏樹が手を振ると、円たちが小走りでやってくる。
「なっちゃん! 魔王城おもしろかったで! まさか義政くんが見つけた隠し部屋に、魔族の宝が隠されているとはさすがに予想できへんかったわぁ」
「義政先生、なにしてんの!?」
「紳士の嗜みです。隠し部屋を見つけると、つい、ね」
「……紳士っていったいなんなんだろう」
「なんなんやろうねぇ」
ニヒルに笑う義政は異世界の空を見ていた。
無駄にハードボイルドな気がする。
「でも、ちょうどよかった。祐介くんがなんか話があるみたいだよ」
「どうせ、また魔族さんがどうのこうのでしょう?」
「都さん辛辣ぅ! いや、きっとそうなんだろうけど、なんか無駄に顔がきりっとしているし、真面目な話かも?」
「ソーニャさんとの話じゃないかな?」
澪がそう言うと、一同が「あー」となる。
戦闘の最中、「子作りする」約束をしたらしい祐介とソーニャ。
夏樹は他の世界でまんたさんとまんたまんたしていたので、残念ながら決定的瞬間に居合わせることができなかった。
実に悔しい。
「もしかして、娘さんをください的な?」
夏樹がそう首を傾げると、「え?」と円たちが目を見開く。
「なっちゃん……外見的には幼いけど、ソーニャさんは……えっと、ほら」
「ギーゼラさんのお母さんですよ」
言い辛そうな円の言葉を、くいくいと眼鏡を触りながら義政が引き継いだ。
「――あ」
「もっと言うとラーラさんのお祖母様です」
「ダークエルフの中でも長生きらしいよ?」
都と澪の言葉に、エルフたちが「うんうん」と頷いている。
「――祐介くん、マジでどうするんだろう」
夏樹の問いに答えられる者はいなかった。
「……君はいつも楽しそうだな、由良夏樹」
「――アマイモン!」
「アマイモン様と呼べ、せめてアマイモンさん、と言え! 由良夏樹!」
現れたのは、アマイモン、ガープ。
そして、アテーナー、フン・フナフプ、ベヒモスの五人だ。
見かけなかったふたりも、アマイモンたちと合流していたようだ。
「調子はどうだ、アマイモン、さん?」
「アマイモンでいい」
「じゃあ俺のことも夏樹って呼んでよ。フルネームで呼ぶのってめんどくね?」
「ふふ、では夏樹と呼ばせてもらおう」
「おう! あ、ガープ、テメーは由良さんって呼んでいいぞ」
「……この野郎!」
「やんのか、ああ?」
「はっ倒すぞ、おお?」
夏樹とガープが睨み合う。
「あ、酒飲んでる! ずーるーいーぞー!」
ベヒモスが夏樹の背中を叩いた後、祐介の頭を叩き、小梅たちの酒盛りに加わった。
彼女なりの挨拶だったのだろう。
「由良夏樹」
「アテーナーさんだっけ」
「そうだ。すまないが、帰還に便乗させていただく。ところで、杏の具合はどうだ?」
「まだ目覚めないよ。そこのキャンプマットの上で寝てるよ」
「そうか。よければ、彼女のそばにいてもいいだろうか?」
「……きっと喜ぶと思うよ」
「ありがとう。敵対したにも関わらず寛容なことに感謝する」
「うっす」
アテーナーはそう言い、杏の傍に向かった。
「まあ、なんだ。俺たちも綾川杏のことは気にしているんだ。お前は気に入らねえかもしれねえが、心を入れ替えていると思ったら邪険にしないでやってくれ」
「…………考えておくよ」
ガープも杏を気遣っている。
彼女にとって、ガープやアテーナーと出会ったのは良いことあったのかもしれない。
「ところで、大地の勇者は何か覚悟を決めた顔をしているようだが?」
「よくぞ聞いてくれました、アマイモンさん!」
アマイモンが会話を振ると、祐介は煌めいた。
「――魔王ギーゼラさんに結婚のご挨拶をしようと思っています」
予想はしていたが、実際に言われると衝撃は大きい。
夏樹たちは緊張に包まれた。