作品タイトル不明
88「ひとりいないんじゃね?」②
佐渡祐介は大地の勇者だ。
この世界に召喚され、尊厳を踏み躙られ、心をへし折られた。
地球に戻って理解者であり友人を超えた家族とも呼べる人たちと出会い、少し心は軽くなった。
それでも、心の傷が癒えたわけではない。
ジクジクと痛むのはそのままだ。
――しかし、そんな祐介に転機が訪れることになった。
二度目の異世界訪問だ。
理不尽に呼ばれるのではなく、自分の意志で行くのだ。
大切な友人たちが行くのならば、行かない選択肢はない。
何よりも、祐介自身が過去と決着をつけたかった。
孤独ではない、友人たちと一緒に行った異世界は違う景色に見える――はずだったのだが、何の因果か祐介だけブレイバーズ王国に勇者として召喚されてしまったのだ。
しかも、夏樹を召喚しただけでは飽き足らず、彼と相思相愛を捏造する王女ベアトリス・ブレスコットに、第二の勇者として目をつけられてしまった。
必死の抵抗の結果、ベアトリスの反感を買い死刑となりかけたが、ブレイバーズ王国に潜入していたダークエルフのソーニャによって助けられ、ときめいた。
その後、何かと一緒に行動することが多かった。
女性に対してトラウマがある祐介だったが、不思議とソーニャは平気だった。
戦場でも共に立ってくれた彼女は、戦いの最中に祐介を励ましてくれた。
そして、約束をしてくれた。
「――子作りしようぜ」
――佐渡祐介にとっての春が来た。
で、終わるならよかったのだが、
「お前が佐渡祐介だな?」
「俺たちの女神ソーニャちゃんに手を出したんだってなぁ?」
「君の覚悟を見せていただきたい。なに、男の醜い嫉妬だと思ってくれて構わない」
魔族たちに絡まれていた。
「な、なんですか、あなたたちは!」
「ソーニャたんが子作り宣言したお前がどれほどの男か試しに来た!」
血気盛んな魔族たちがざっと百名。
全員が今にも血の涙を流しそうだった。
「……うわぁ、なんだかデジャブ」
不思議と、彼らの姿には覚えがあった。
「君たちの気持ちはわかる!」
地球では気弱な青年でしかない祐介だったが、今は違う。
勇気を持つ者、勇者だ。
様々な種族の魔族を相手にしても怯むことはない。
かつて、怯えていた祐介はもういないんだ。
すう、と大きく息を吐くと、
「ソーニャたんは僕のものだぁああああああああああああああああ!」
ドヤ顔をして、煽った。
そして、追いかけっこが始まった。