軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87「ひとりいないんじゃね?」①

ぱくぱく、と口を動かしていた魔王ギーゼラは、しばらくしてから叫んだ。

「何をしているんだぁああああああああああああああああああ!」

口を開けて呆然としていた千手も、夏樹の頭を引っ叩く。

「やりすぎだろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「あいたー」

頭を抑えて涙目になる夏樹に、千手とギーゼラは詰め寄って問うた。

「なんだよ、あの雷は! ここからでもはっきりと見えたぞ!」

「天の怒りか!? あんな力をまだ持っているのか!? というか、ブレイバーズ王国は残っているのか!?」

「さあ?」

「さあ!?」

「なぜ、お前が首を傾げる、由良夏樹!?」

「えー、だって本当にわからないんだもん! 残った魔力を使ってぶっ放しただけだから!」

千手が頭を抱えた。

ギーゼラは額に手を当てて天を仰いだ。

アマイモンと激闘をしていながら、まだあれだけの力が残っていたのか、と呆れるべきなのか感心するべきなのか悩む。

「魔王ギーゼラ・シラー」

夏樹が魔王の名を呼ぶ。

その声に、自然と背筋を伸ばした。

「俺はもうこの世界の人間に何もしない。する気もない、興味もない。それでいいよね?」

「ああ。もう十分すぎるほど世話になった。――ありがとう」

夏樹とギーゼラは握手を交わした。

最後の握手だ。

「――よし! 帰ろう!」

夏樹の一言に、全員が「おう!」と腕をあげて応じてくれた。

「待て、由良夏樹。そう慌てずとも、お前たちは我々魔族の恩人だ。時間が許すのであれば、感謝を示したい」

「そういうのは、いいよ。感謝されたいわけじゃないし、こっちもやりたい放題しちゃったから」

水無月都が「やりたい放題したのは夏樹くんだけですけどね」と呟いたが、聞こえない。

「あ、でも、許してくれるのなら、宝物庫でもらった武器とかはそのままもらっていい?」

「もちろんだ。武器や武具も使い手がいるのなら嬉しいだろう。特に火輪の剣はな」

三原一登という相棒を見つけた火輪の剣を、この世界に置いていくことはできないだろう。

一登が力を得たことで、地球で何かをするなどとは微塵も思わない。

ただ、強い力を持つことで目をつけられないといいが。

「やれやれ、ようやく地球に帰れるのか、自宅が恋しいぜ」

「そうだよな、ダーリン。早く愛の巣へ帰りたいよな!」

「……着いてくるつもり!?」

千手と虎童子がイチャつき。

「そういえば、しののんのマンションで暮らしているのよね。妹たちが羨ましいわ」

「ぴっ。お、俺たちは、円と一緒に生活しているから、姉貴に対して不義は働いてねぜ!」

「べあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべあべあ!」

「ふぅん」

茨木童子が妹たちに圧をかけ。

「……これ、どう考えても茨木童子が一緒に住むフラグやね」

「ご、ごめんな、円」

「ええよ。もう終わったことやし。兄貴はずっと大変やったんやから、幸せになってな」

「――円。ほんま、ありがとう」

円が茨木童子と東雲の関係を祝福した。

「異世界は良い経験になりましたね。お姉ちゃんラブラブソードも手に入りましたし、これで私たちもパワーアップです! ちょっと暴れたりませんでしたけどね!」

「あ、あのね、都? その剣の名前、考え直さない?」

水無月姉妹も変わらず仲がいい。

「ご主人様の世界に一緒に行けるなんて嬉しいですわ!」

「……親になんて説明しようかな?」

「ご両親への挨拶……気合いが入りますわ!」

まるで嫁入りするような気合いの入りっぷりの火輪の剣に対し、一登はどうやって親に説明しようかと悩んでいた。

そんな彼らの傍には、まだ目を覚さない杏の姿がある。

「くっ、俺様としたことが、異世界にいる間にすべて酒を消費できんかった」

「酒呑としてなんたる失態っす!」

小梅と銀子は、ゴッドからもらった金で勝った酒をすべて消費できなかったことを悔いながら、新たな缶を開けていた。

「――あれ? 祐介くんはどこ?」