作品タイトル不明
86「ブレイバーズ王国の終わり」
ブレイバーズ王国王都。
ボンダール公爵は、お抱えの騎士と冒険者たちを率いて王宮を占拠していた。
魔法使いたちは、王が戦場に連れて行ってしまったが、各一族にお抱えはいる。
魔法使いを抱えるのは貴族のステータスなので、王宮魔法使いよりも扱いはいい。
「閣下、いえ、陛下と言うべきですかな」
腹心の部下の言葉に、ボンダール公爵は髭を撫でながら笑みを浮かべた。
「気が早いな。だが、いい響きだ」
王家の血こそ引いていないが、国王サイラスの正室であるキャメロンは、実の妹だ。
王家の人間がもういないのならば、自分の番だと重い腰を上げたのだ。
「ところで、例の件はどうだ?」
「はい。王子殿下が外で作った子供たち、もしくはその可能性がある子供はすべて消えていただきました。無論、母親ごと」
「仕事が早くて助かる」
「いえ、陛下のためならば、どんなことでも喜んでいたします」
第一王子トレイシー、第二王子ルーサーは女遊びをそれなりにしていた。
確証はないが、愛人を囲って子供もいたという。
実際、金品を送ったりしているのも確認されている。
他の貴族たちが、その子供を神輿にすると面倒なことになることは、考えずともわかる。
ボンダール公爵は早々に、少しでも疑いがある者は全て排除したのだ。
魔王、魔族との戦いに勝利したのなら、いざ知らず情けなく敗北した王家の血縁者などいらぬのだ。
「しかし、陛下。ある意味、まだ王家の血は絶えていません」
「公爵どもめ」
忌々しい、とボンダール公爵は顔を歪めた。
ブレイバーズ王国は五つの公爵家が王家を支える形としている。
その中で、唯一ボンダール公爵だけが王家の血が入っていない。
いや、元々は公爵家であるため王家の血を引いていたのだが、二代前から血は途絶えていた。
そのせいで他の四家からは「名ばかり公爵」などと言われていたのだ。
「奴らにとっては悔しいだろうな、まさか私が一番に王宮入りするとは」
「陛下、いかがなさいますか?」
「――殺せ」
ボンダール公爵は躊躇わなかった。
「生かしておいても利などひとつもない。全員、始末しろ。新たな王家と国に奴らは必要ない」
「はっ、陛下のお心のままに」
公爵家には、お抱えの魔法使いも多い。
その対策として、魔法使い殺しと呼ばれる剣士を集めている。
魔法使いが魔法を撃つよりも早く、行動し、攻撃できる速さ特化の者たちだ。
魔法使いが優遇されるのは火力だが、その火力も撃つ前なら怖くない。
「さあ、我が覇道をはじめようではない――」
ボンダール公爵が両腕を広げて、唾を飛ばして上げた大声を雷鳴がかき消した。
「へ、陛下」
腹心の男は、その場に尻餅をつき窓の外を指さしていた。
「――な」
ボンダール公爵の瞳に映ったのは、王都を覆い尽くす雷の雨だった。
他に、どう表現すればいいのかわからない。
いく筋もの雷が、雷鳴を轟かせて降り注いでいるのだ。
「何がおきているぅうううううううううううううううううううう!」
ボンダール公爵が叫んだ瞬間、――雷鳴が轟き雷が王宮を突き破って降り注いだ。
――ブレイバーズ王国王都は、雷に包まれ、滅んだのだった。