軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

85「炊き出しには豚汁じゃね?」②

「おい、由良。お前の気持ちはわかるが、鏖殺鏖殺ってなぁ」

夏樹がうきうきしながら「鏖殺鏖殺っ!」とはしゃいでいると、千手が嗜めようとする。

だが、他ならぬギーゼラが待ったをかけた。

「いや、七森千手、気遣いは嬉しいのだが、ここまでくると由良夏樹の言葉もあながち間違っていないのだ」

「……マジかよ」

ギーゼラは苦虫を噛み潰した顔をしていた。

「ブレイバーズ王国の内乱などどうでもいい、他の国がブレイバーズ王国を奪おうとしているのも大した問題ではない……しかし、人間たちが、我々魔族が戦って勝ったせいで大陸が荒れる、と言い出したようだ」

「……なんちゅー無茶苦茶なことを言ってくるんやねぇ」

茨木童子が寄り添う東雲も呆れ顔だ。

「ブレイバーズ次期国王とやらが数人、連絡が来ている。内容は、笑えるぞ。我ら魔族の服従と、魔族の土地を開け渡せば許してくれるそうだ」

「……意味がわからねぇ。なんで勝った方が負けた方に許してもらわなきゃならねえんだか」

「せやねぇ。しかも、服従と土地を渡すとか……魔族を奴隷かなんかにする気満々やろう」

千手と東雲だけではない。

この場にいる誰もが、この世界の人間の強欲さに顔を顰めていた。

「で、どうするの?」

夏樹が尋ねると、ギーゼラは決意の宿った顔を向ける。

「最後まで戦い続けよう」

「へぇ」

「もう私たちは分かり合えない。手を取り合うこともできない。悲しく、残念だが、仕方がない」

ギーゼラたち魔王がいくら歩み寄ろうと、人間たちに手を取りあうつもりが微塵もないのだ。

戦いが続いてしまうことは仕方がないことだった。

「私は魔王だ。魔族を、民を守る義務がある。ゆえに、戦おう。どちらかが勝つまで」

「よし! んじゃ、最後まで付き合うよ」

夏樹が立ち上がり、ギーゼラに手を伸ばした。

「俺はこの世界の人間が反吐が出るほど嫌いだ。だけど、魔族さんたちのことは嫌いじゃない。散々、魔族さんたちを殺した俺が何を言うのかって思われるかもしれないけど、手を貸したい」

「――由良、夏樹」

「共に戦おう」

夏樹は「俺に任せろ」とは言わなかった。

アマイモンとの戦いで大きく消耗しているが、人間たちを制圧するくらい片手間にできる。

その気になれば、今、この瞬間に遠距離攻撃で人間たちに大きな損害を与えることだってできた。

「気持ちだけ受け取っておこう」

しかし、魔王ギーゼラは夏樹の手を取り握手こそしたが、申し出は受けなかった。

夏樹は特に驚きも、悲しみもしない。

ただ、一言だけ。

「いいの?」

そう尋ねた。

少し苦笑してギーゼラは頷いた。

「もう十分すぎるほど助けてもらった。魔族に君を悪く思っている者は誰としていない。みんな感謝している。あとは、我々が我々のために戦おう」

静かに手を離したギーゼラに、夏樹はにいっと笑う。

「んじゃ、餞別代わりだ!」

轟っ、と夏樹の魔力が高まる。

消耗しているとは思えない凄まじい魔力だった。

「聖剣さん! あ、槍だった! 星槍さん!」

「何よ?」

どこかに行っていた「蒼穹の星槍」が夏樹の隣に現れる。

「この世界で、最後の一撃をかまそうぜ!」

「いいわね! 思いっきりやっちゃいましょう!」

きらん、と二人のひとみが輝く。

「ええぞ! 思いっきりやってやるんじゃ!」

「積年の恨みを晴らすときっすよ! いえーい!」

酒が入って陽気になった小梅と銀子が煽る。

夏樹の腕に一本の槍が握られた。

かんっ、と石突で地面を叩くと、夏樹は星槍を掲げた。

「ちょっと、ま――」

ギーゼラが止める間もなく、夏樹は蒼穹の星槍を振るった。

「――荒ぶれ、蒼穹の星槍」