作品タイトル不明
84「炊き出しには豚汁じゃね?」①
「……あー、疲れたー」
重症者の治療を終えた夏樹たちが、炊き出しをしている小梅たちと合流した。
「あ、ガネたんちーっす!」
「ちーっす! 俺っちは戦わない代わりに後方支援させてもらってるぜぃ!」
「あざーっす!」
「いえいえー!」
四本の腕にお玉と皿を持って兵士たちに豚汁とおにぎりを配っていた。
「……豚汁とおにぎりなんだ。異世界で」
「好評だぜぇ! 俺っちも牛丼屋さんで初めて飲んだ豚汁に感動したもんだぜ」
「ちっちっち、甘いなガネたん。豚汁はご家庭の味が一番なんだぜ!」
「――なん、だと」
「今度食べにおいでよ!」
「おうよ! って、なっちゃんもずいぶん疲れているようだから、ほら、これ食べて。安心していいぜ、食材も何もかもみんな地球から持ってきたから」
「いただきまーす!」
ウインクするガネたんから、豚汁とおにぎりをもらって小梅たちが輪になって座っている場所に夏樹も移動した。
「お疲れ様でしたー」
「おう! お疲れじゃのう、夏樹。ささ、ちこう寄れ、苦しゅうない苦しゅうない」
「なんでお代官様みたいなの?」
小梅に手招きされて彼女と銀子の間に座った。
「あ、夏樹くんお疲れ様っす。肩でもお揉みしましょうっすか?」
「銀子さん? なになに? どうしたの?」
小梅も銀子もどこか様子がおかしい。
期待しているような目をしているように見えるのは気のせいだろうか。
「いやぁ、私は新たな神々? とかいう雑魚をぶっ殺したんっすよねぇ」
「俺様はちゃんとぜっくんを足止めしておったぞ! まあ、美味しいところは全部アマイモンに取られてしまったんじゃが、それでも頑張ったんじゃぞ!」
「……で?」
「お酒くださいっす!」
「お酒飲みたいんじゃ!」
「あー」
そういうことか、と理解した。
「虎童子さんとイチャついている千手先生! 小梅ちゃんと銀子さんがお酒飲みたいって言ってます!」
「由良ぁ! 俺はイチャついてねえから!」
「え? でも」
茶化すのではなく、純粋に首を傾げた。
千手の隣にはおにぎりを手に持って「ダーリンあーん」をしている虎童子がいる。
どう見てもイチャついている。
「おい、マジな顔するんじゃねえよ! イチャついてねえから! あと、虎童子もおにぎり押し付けてくんな! 自分で食える!」
「千手さんツンデレー!」
「由良! 廊下に立たせるぞ!」
「それよりも、お酒」
「……いいんじゃねえか。もう戦いは終わった。魔族と人間の揉め事に関しては拘るつもりはないんだろう?」
「そうだね。――じゃあ、引率の千手先生から許可が出たのでビール解禁!」
「やったーっす!」
「ひゃっはーっ、じゃ!」
アイテムボックスから冷えたビールを取り出すと、銀子と小梅だけではなく、東雲と茨木童子、星熊童子、征四郎も手を伸ばした。
「熊さん! 新しいはちみつよ!」
「べぁあああああああああああああああああ!」
夏樹ははちみつの瓶を星熊童子に投げると、彼女は目を輝かせて喜んだ。
「――楽しそうだな、由良夏樹」
「あ、ギーゼラさん。お疲れ様っす!」
「ああ。まずは、感謝を。兵を助けてくれてありがとう。君たちが、我らの力になってくれていることを本当にありがたく思うよ」
「いえいえ。んで、人間たちはどうなった?」
夏樹に手を振りながら疲れた顔をして現れた魔王ギーゼラに、アイテムボックスから折りたたみチェアを取り出し、座ってもらう。
「すまない。結構面倒なことになってきた」
「面倒?」
「ブレイバーズ王国の王族がいなくなったんだが、するとどうだ。次から次へ、自分こそが王だと内部分裂を初めて争いを始め出した」
「うわー」
「さらに」
「まだあるの!?」
「魔族との戦いをブレイバーズ王国に丸投げして支援に徹していた国々が、ブレイバーズ王国の混乱に乗じて侵略をはじめた。さらに、我が国が疲弊していると考えているようで、攻めてくるようだ」
顔を覆い、はぁぁ、と大きくため息をつくギーゼラに、夏樹は肩を叩き気遣う顔をした。
「やっぱり鏖殺するしかないよね」