軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「由良家の食卓はサタンさんが守ってるんじゃね?」

夏樹とアマイモンが全力で戦っている頃、由良家の台所。

「――っ」

フリフリのエプロンを身につけた魔王サタンは、何かを感じ取ったように閉じていた目を開いた。

「サタン?」

茶の間のテーブルでワイドショーを見ていたリヴァイアさんが、視線を送る。

「――具材がいい感じに煮えた。あとは、ルーを入れればシチューの完成だ」

「……そんな全力でシチューを作られても食べづらいんだけど」

「春子さんに食べさせる物に手を抜けるか! 考えてみるんだ! 俺が作った料理が春子さんの栄養になり、身体に吸収されていくんだぞ! 全力で作らないで、いつ全力を出す!」

「きんもー」

「きもくない!」

「そこまで全力出すなら、ルー使わないで一から作れよー」

「お馬鹿! 日本のルーは最高だ! カレー然り、シチュー然り、ハヤシライスとか最高!」

「……それはそうだけどさー。どちらかというとレトルトの方にお世話になってるけどー」

「そうだな。俺も、レトルトカレーは今でも好きだ。ご当地の千円くらいするレトルトカレーを食べると、ああ、天下取ったなって思うもんな」

「思わねーから。いや、美味しいけどさ。一応は、魔界で天下取った魔王が千円で……しょぼー」

「しょぼくない!」

由良家は平和だ。

夏樹たちは異世界で数日過ごしているが、向島市は、地球ではまだ一日経っていない。

「ていうかさー、なっちゃんは絶望の神に勝てるかなー?」

「余裕とは言わないだろうが、勝てるだろうさ。絶望の神は強いが、あいつは遊び癖がある。真面目にやればやるほど無意識にふざけているからな。自滅する可能性だってあるぞ」

「確かにー。んじゃ、問題はアマイモンかー」

サタンもリヴァイアサンも、アマイモンは昔から知っている。

「あいつはさー、クラスにいるちょっと目立たない奴なんだよなー」

「そうか? 俺はマイペースな変わり者だと思っているんだが」

「うーん。その辺は、関わり方が違うせいかも?」

「そうだな。お前はあまり関わらなかったな」

「僕が関わろうとしなかったんじゃねーからー! ガープの奴が、アマイモンに悪い影響与えるから近づくなって言うからー」

「……間違ってはいないだろう」

「そりゃね!」

「ただ、今のアマイモンは強いぞ」

「それは知ってるー。サマエルとサタンが喧嘩していた頃より強いんじゃねー?」

サタンは肯定も否定もしなかった。

だが、リヴァイアサンはそれを肯定と取った。

アマイモンは良くも悪くも普通の魔族だった。

上から数えた方が早い程度には実力者だったが、サタンはもちろん、七つの大罪の魔族たちよりもずっと弱かった。

あまり戦闘に特化していないマモンよりも弱かった。

しかし、現在のアマイモンは七つの大罪の魔族たちよりも強い。

リヴァイアサンも、自分の得意な領域で戦わなければ勝てないと思っている。

現在の魔族でまともに戦って勝てるのはサタンとサマエルくらいだろう。

ルシフェルもなりふり構わず全力を出せば、相打ちくらいはいけるかもしれない。

小梅が真の力を出すことができれば、いい勝負をするだろう。

「サタンもサマエルも昔よりもずっとずっと強くなったと思うけどさー」

「なんだよ?」

「昔と同じような、アマイモンとの力の差はないよねー」

「否定はしねえさ。ただ、万あった差が千になったところで負けやしない」

「結構詰められたね」

「正直、強くなっても力を使うところがねえだろうに」

「新たな神々と戦えよ。一番やばいのを倒せるのはサタンレベルの奴らだけでしょー」

「……正直、俺はあれとは戦いたくねえな」

「おっと」

「サマエルはやる気がないだろうしな。魔族は静観でいいだろうよ」

「神々は結構マジだけどねー」

「一部がな」

サタンは鍋をかき混ぜながら、口を閉じた。

もう新たな神々に関して話をするつもりはないようだ。

「ねえねえ」

「なんだよ」

「なっちゃん、アマイモンに勝てるかな?」

ふっ、とサタンは笑った。

「俺の息子だぜ! 勝つに決まってんだろ!」

「……いや、お前の息子じゃないし。僕のお兄ちゃんだし!」

「春子さんと結婚したらいずれ……!」

「その野望がきんもー!」

「きもくねーし! ていうかなんでお前が妹枠なんだよ! どちらかと言ったらお兄ちゃん枠だろ!」

「お前、ふざけんなよ! こんな可愛いお兄ちゃんがいるか!」

「声っ、低っ!」

――由良家は平和だった。