作品タイトル不明
間話「ベースって指で弾くとかっこよくね?」
――青森、某所。
べん。べべん。べんっ。べべべんっ。
「……おい、マモン」
「なんでまもんまもん?」
「いくらお隣さんがめっちゃ離れている田舎だからって、夜中に何やってんだ?」
「……実は、バンド活動をしようと思いまもんまもん」
「三味線で!?」
近所のおばあちゃんにもらった日本酒をおいしそうに飲んでいたサマエルだったが、目の前に座って急にべんべんし始めたマモンに我慢できず突っ込んだ。
「周平がバンドやりません? って誘ってくれたので、ベースを担当しようかと思いまもんまもん」
「……それベースじゃねーし! 三味線だし?」
「まもん? しかし、べんべんいっていまもんまもん」
「ベースも確かにべんべんだけどさ! アンプに繋いだら違うだろ! お前、世界中のベーシストに一発ずつ殴られてこい!」
周平は、アルバイトとして雇っている少年だ。
やんちゃな不良少年だが、最近は農業を楽しみ、動画の編集も手伝ってくれるいい子だ。
他の少年少女たちにまとめ役でもある。
「いや、まあさ、バンドはいいんだよ。マモンが周平たちと仲良くしているのは本当にいいことだと思うよ。思うんだけどさ?」
「どうしまもなもん? そんな歯にまもんまもんが挟まったように」
「挟まってねーよ! いいよ? バンドいいじゃん! でもさ、お前……まもんまもんでバズってんだから、バンドまでバズったりしないよな? 一応、お前、現在ペナルティ中だからな? 楽しみすぎだろ!」
「え? あ、ああ、そうでした。このマモン、無期懲役中ですねまもんまもん」
「無期懲役じゃねーだろ! 私のチャンネル登録五万突破したぞ! 百万まであと九十五万じゃん!」
「……まもんまもん……人間なら無期懲役でまもんまもん」
「そこまでじゃねえだろ! こんペースでいったら、十年くらいでいけるんじゃね?」
「――さまたん様! 亜子さんは青森から出る可能性だってあるので、十年は長すぎまもんまもん!」
「無茶言うな! 大丈夫だって、亜子ちゃんは青森に残るつもりって言ってたし。将来的に子供ができたら家族旅行にちょっと困るかもしれないけど」
「まもんっ、さ、さまたん様! 子供なんて、そんな! まだ清い交際の僕たちにそんなことを!」
「おい、キャラ変えるんじゃねえよ。ピュアっても、お前は外見はイケおじの三十代だからな! そういうキャラじゃねえだろ!」
「……まもんまもん」
「しょんぼりすんなよ! まあ、そもそもその面でまもんまもん言っているのもキャラがあってないっちゃないんだが」
ぜーはー、とサマエルがツッコミに息を切らせる。
風呂上がりだというのに、少し汗をかいてしまった。
喉も渇いたので、冷蔵庫からビールを取り出し、プルタブを開けた。
グラスに注ぐのが面倒だったので、そのまま飲む。
「かーっ、たまにはこうやって飲むのもいいな! ほら、お前も三味線置いて飲もうぜ」
「ご相伴に預かりまもんまもん」
冷蔵庫から瓶ビールを取り出し、小さなグラスをふたつ用意する。
グラスをひとつ手渡し、ビールを注ぐ。
「まっもっも……」
「おっとっとみたいな感じに言うなよぉ。まあいいや、乾杯」
「まもんまもん!」
くいっ、とビールを飲むと、サマエルは思い出したようにマモンに告げた。
「まあ、バンドするのも三味線するのも自由にしていいけどさ。仕事だけは頼むな」
「まもん!」
「明日、私は北海道に行ってくるから、留守番頼むぞ」
「――まもん!? まさか、さまたん様、このマモンを置いて海の幸を堪能しに行くつもりでまもんまもん!」
「――北海道限定ビールを買ってくる」
「あ、まもん」
通販でいいじゃん、と喉まで出かかったが、マモンは空気を読んで言わなかった。
――今日も今日とて青森は平和だった。