軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74「決着です」

夏樹の全力の一撃は、アマイモンの拳を砕き焼き尽くした。

振り下ろされた蒼穹の星槍はアマイモンの右半身を消し飛ばす。

「――見事だ。素晴らしい一撃だった」

宙を舞ったアマイモンが賛辞の言葉と共に、背中から地面にぶつかる。

「……なに、やってんだよ!」

半身を失い、目を閉じようとしたアマイモンの胸ぐらを掴んで、夏樹は叫ぶ。

「なんで、なんで力抜きやがった! 互角だったじゃねえか! なんで途中で力を抜いたんだよ!」

「抜いてなど、いないさ。お前の勝ちだ、由良夏樹」

「待てよ、なに満足そうな顔をしていやがる! おい、死ぬんじゃねえ! 死んだらぶっ殺すぞ!」

無茶苦茶なことを言う夏樹は、怒りに支配されていた。

間違いなく夏樹とアマイモンの一撃は互角だった。

ぶつかり合い相殺されるか、力比べをするかのどちらかだっただろう。

しかし、アマイモンが力を抜き、夏樹の全力を防御もせず喰らった。

夏樹はそれに納得ができなかった。

「なぜだ、なぜだアマイモン!」

言葉がうまく出てこない。

口を開けた問いかけてばかり。

「――よせ、由良夏樹。アマイモン様はもうお眠りになる。邪魔をするな」

そんな夏樹の肩に手を置いたのはガープだった。

「――は?」

「俺からも感謝する。よくぞアマイモン様と全力で戦ってくれた。よくぞアマイモン様の全力を受け止めてくれた」

「何言ってんだ? お前、殺すぞ?」

「聞け、由良夏樹」

ガープは涙を流していた。

アマイモンを見て、悲しみと喜びの涙を流していた。

「お前、なんで」

「――アマイモン様はもう限界だった」

「何を言って」

「強くなり過ぎてしまったのだ。アマイモン様は強い魔族だが、サタンやサマエルのような規格外の魔族ではない。しかし、同等か、それ以上の力を長い鍛錬の末に得た」

「……ガープ、私をあまり褒めるな。私は、褒められ慣れていない」

アマイモンは、襟首を掴む夏樹の手に自身の左手を添える。

「すまない、最後の最後まで身体が持たなかった。お前との戦いが楽しくて、忘れていたのだ。私にはもう時間が残っていないことを」

アマイモンから感じ取っていた強力な魔力が、今はもうほとんど感じない。

「おい、アマイモン! あんた、なにを」

「もういいんだ、由良夏樹。どうかアマイモン様に安らぎを与えてくれ」

「ガープ!」

「アマイモン様は強くなり過ぎた。結果、身体がその強さに耐えられなかったのだ」

「は?」

「だからこそ、アマイモン様は戦いを求めた。ご自身が血の滲むような努力の果てに得た力を使うにふさわしい相手と戦い、死にたかったのだ。絶望の神の企みなどもどうでもいい。アマイモン様は、由良夏樹、お前と戦い死にたかったのだ」

「勝手なことを言うんじゃねえ!」

夏樹は納得できない。

できるはずがない。

すべての力で打ち勝ったわけではないのだ。

アマイモンに時間が来ただけなのだ。

それは、夏樹の勝利ではない。

「由良夏樹……出会いさえ違えば友になっていた少年よ」

「なんだよ?」

「――とても楽しかった。ありがとう」

「――っ、おい!」

「ガープよ」

「はっ!」

「世話になった。アテーナーと共に地球に帰り、元の暮らしに戻れずとも新たな神々の勢力ではないと弁明するのだ。由良夏樹、できれば、ガープとアテーナーに慈悲を」

「わかった、わかったから、逝くな!」

アマイモンはゆっくりと目を瞑る。

満足した顔で、口持ちは笑みを浮かべていた。

「――本当に楽しい戦いだった」