作品タイトル不明
73「全力の一撃です」
――斬られた。
星槍が使えなかったとはいえ、殺すつもりで魔力を注いだ一撃が押し負けたことはショックだった。
夏樹の手に持つ断たれた魔剣が朽ちていく。
(――俺の力に耐えられなかったのか)
師匠と再会し、器が大きくなったことにより全盛期に近づいた。その上で、この世界の魔力を使い、聖剣の本来の姿を引き出すことに成功した。
その結果、夏樹自身も大きく力を得ていた。
魔剣が夏樹の力とアマイモンの力に耐えられなかったのだ。
だが、魔剣だけが悪いわけではない。
夏樹も魔力で身体を強化しながら斬られたのだから。
「やってくれるじゃない!」
「――まだ笑うか! いいぞ、由良夏樹!」
夏樹は回復に魔力を割かず、攻撃だけすることに決めた。
今は守る時ではない。
責める時だ。
「次は俺の番だ、雷を喰らわしてやるよ! 俺は親切だから、直接身体に流し込んでやるからぁ!」
夏樹の次の行動を理解したアマイモンが手を伸ばし、星槍を持つ手を砕く。
が、夏樹は星槍から手を離さない。
「――星の雷」
アマイモンの腹部を貫く星槍から、彼の体内に雷が放たれ暴れ狂った。
悲鳴も絶叫も上がらない。
雷に焼かれ、アマイモンは声さえ出せない。
「このまま死ねやぁ!」
内側から身体を焼かれれば、普通は死ぬ。
だが、夏樹はアマイモンを「普通」などとは思っていない。
砕かれた手を回復し、アマイモンの胸に蹴りを入れて星槍を無理やり引き抜いた。
そして、思い切り薙ぐ。
「――っ、しつこいって言われたことない?」
だが、星槍はアマイモンの腕によって止められた。
「………………戦いではよく言われている」
「その再生速度も面倒くせぇ!」
もうすでにアマイモンは回復している。
夏樹も場数は踏んできた自負があるが、アマイモンの方が経験は上だ。
どのような攻撃を受けても、自分ならば大丈夫というラインがはっきりと見えている。
夏樹にはその見極めができない。
なぜなら、致命傷を負ったことが数える程度しかないからだ。
素盞嗚尊や雷神トールなど格上の相手と戦ったことが無いに等しいことが、夏樹の弱点だった。
「そろそろ決着つけようぜ」
「私もそう提案しようと思っていた。これ以上ここで戦うのは良くない」
長引かせる必要はない。
出し惜しみも何もなく、全力で殺す。
殺せなければ夏樹の負けだ。
「行くぞ、アマイモン」
「来い、由良夏樹」
夏樹が蒼穹の星槍を構え、アマイモンが魔力で作り出した剣を解き拳に纏わせた。
「剣はいいのか?」
「私の最大の一撃は、この拳だ」
「そういうところ、かっこいいな」
「よせ、照れてしまう」
夏樹とアマイモンは笑った。
笑いながら、すべての魔力を解き放った。
「――輝け蒼穹の星槍」
「――穿て我が最大の拳よ」