作品タイトル不明
71「全力を出すんじゃね?」④
聖剣さんこと、『蒼穹の 星槍(そうきゅうのせいそう) 』は普段ならば戦いの最中であっても、むしろ戦いの最中だからこそ夏樹と会話し戦いの補佐をしているはずなのだが――今の彼女にそんな余裕はなかった。
(やっべぇええええええええええええええええええ! 以前の殺伐としていた大人の夏樹もかっこよかったけど、この姿で天真爛漫に笑うのもやべぇええええええええええ! ときめきがとまらないんですけどぉおおおおおおおおおお! 血圧上がるぅうううううううううう! 沈黙するしかねぇえええええええええええ!)
■
夏樹が星槍を、アマイモンが拳を振るう。
耳が痛くなるような金属音と、火花と錯覚するような鮮血が舞う。
「――素晴らしい、全力を持ってしても私の身体を傷つけるのか!」
「よく言う! 薄皮一枚しか斬らせてくれないくせに!」
「はははははははははは!」
「ひひひひひひひひひひ!」
夏樹とアマイモンは笑う。
星槍を長剣を振り回すように薙ぐ。
夏樹には槍術など使えない。そもそも剣術だって学んでいない。
頑丈で力を持つ武器を、力任せに振り回す。それだけなのだ。
一方、アマイモンも身体強化を極め、魔力量も規格外の夏樹と同等を持つが武術という意味では素人同然だ。
戦いの中で不必要なものを削ぎ落とし、自分に合った戦いを身につけただけ。
――両者とも、自分が思うままに戦えるからこそ強い。
「死ねや、おらぁあああああああああああああああああ!」
「勇者とは思えない叫びだな」
「知るかぼけぇええええええええええええええええええ!」
夏樹が薙いだ星槍の刃がアマイモンの腹部を襲う。
が、肉体にあたるよりも早く、小さな拳で叩き落とされた。
星槍が大きく地面を抉った。
得物が長くなった分、取り回しが悪くなった気がするが、些細な問題だった。
夏樹は柄を全力で蹴り上げる。
地面を抉り刺さった星槍が脚力によって跳ね上がる。
切先がアマイモンの顎をわずかに斬った。
「器用なことだ。では、次は私から攻撃しよう」
アマイモンが掌を夏樹に向けた。
刹那、魔力が集中する。
「げ」
何をされるのか理解した夏樹が星槍を盾がわりに構えた。
次の瞬間、
「――魔力の砲撃を味わうといい」
圧縮された高密度の攻撃的な魔力の砲撃が夏樹の身体を飲み込んだ。
――が、夏樹が縦に振るった星槍で砲撃を中から斬り裂いた。