作品タイトル不明
63「殺っちゃうんじゃね?」③
松島明日香は絶望の神の身体ごと縦に斬り裂かれた。
「――なん、で」
夏樹には目の前にいるのが明日香なのか絶望の神なのか判断ができない。
混ざり合っていると言うべきか、明日香が食って混ざってしまったと言うべきか。
――とはいえ、些細な問題だ。
――殺す相手が一体化したとは、なんて親切な心遣いだとさえ思う。
一撃では死んでいない。
「なんで!」
夏樹は聖剣を薙いだ。
明日香の腹部が両断され、四分割となる。
「どうして! 好きになってあげたのに!」
明日香の訴えを夏樹は無視した。
否。
聞こえていない。
夏樹は剣を振るうことだけに集中していた。
ただ斬っても死なないのなら、もう一段踏み込めばいい。
「聖剣――神鳴りの剣」
雷鳴が轟き、一瞬だけ世界を白く染めた。
袈裟斬りにされた明日香の瞳から光が消え、肉体が崩れ落ちる。
血と肉を地面に撒き散らし、血溜まりを作ったが、停滞していた雷に焼かれすべて蒸発してしまう。
「――さてと、戦ろうかアマイモン」
夏樹は明日香にも絶望の神にも一切の興味を注ぐことなく、ただ斬り殺した。
■
三原一登はすべての力を聖剣火輪の剣に注いでいた。
全力で振るう聖剣からは焼き尽くすような炎が生まれ、力となる。
しかし、完全に炎を制御しきれない一登は、自らの炎で少しずつ焼かれていた。
――だが、そんな些細なことは手を緩める理由にはならない。
「――っ」
今まであった威圧的な力が消えた。
夏樹が絶望の神を取り込んだ明日香を倒したのだと理解した。
ならば、次は自分の番だ。
円の符が何度も自分を守ろうと飛んできては、炎から守り、焼き消えていく。
彼の霊力も底をつきそうだが、一登を守るために全力以上の力を使ってくれている。
水無月澪と都も、明日香と神剣に操られている杏の動きを縛り、遅くしてくれている。
杏の持つ神剣に亀裂が走っている。
他ならぬ、一登の力だ。
ならば、このままへし折って仕舞えばいい。
一登が自らの炎に焼かれるか、杏に斬り殺されるか、それとも救うことができるのか。すべて一登次第だ。
「ああっ、もう! 見てられねえ! 加勢するぞ!」
「――アイギス!」
見守るだけにしていたガープとアテーナーが加勢してくれた。
ガープは炎に焼かれながら杏の神剣を握り右手を掴み、アテーナーは盾で一登を守ってくれた。
「……たす、けて……かず、と……たすけ、て」
杏の目に光が宿った。
明日香が倒されことで、支配が一つ解けたのだ。
ならば、次は神剣だ。
「魔力が足りないなら、くれてやるよ」
ガープが一登の背中に手を置き、魔力を注いだ。
「うわぁあああああああああああああああああああ!」
爆発的な力が一登を通り火輪の剣に注がれる。
一登の魔力すべてが火輪の剣に注がれ、刀身が炎を圧縮した刃と化す。
――そして。
「――聖剣火輪の剣!」
全力を注いだ一登と火輪の剣は、杏の握る神剣を叩き斬ることに成功した。