軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64「アマイモンとガチバトルじゃね?」①

夏樹は晴れ晴れとした笑みを浮かべてアマイモンの前に立った。

「お待たせ」

「――素晴らしい力だった。正直、年甲斐もなく興奮している」

「よせよ、アマイモン。俺の全力はこれからだぜ?」

「全力を見せてくれるのか?」

「あんたが俺の全力を引き出せるのなら、喜んで」

「なんと挑発的だ。しかし、面白い」

少年の姿をしたアマイモンは、本当に子供のような笑みを浮かべた。

夏樹も負けていない。

本来ならば、アマイモンと戦う理由はない。

ちょっかいをかけられてはいるが、それは絶望の神の仕業であり、アマイモンではない。

むしろ、一番厄介なアマイモンは傍観に徹した挙句、絶望の神と戦ってくれた。

夏樹は純粋に感謝していた。

感謝ゆえに、アマイモンが望むのであれば全力で戦うと決めていたのだ。

――由良夏樹もアマイモンと戦うことを楽しみにしていたのは秘密だ。

「聖剣さん」

「わかったわよ」

握りしめていた聖剣が、人となり離れていく。

「いいのか?」

「ハンデくらいあげないと」

「なるほど。心優しい少年だな。だが、私はこの鍛えた肉体こそが武器であり、防具である。不要な心配はいらない」

「遠慮するなって。俺は年寄りには優しいんだ。それに、俺にはごり押しできる馬鹿みたいな魔力があるから、拳だって負けねえよ」

「なるほど。楽しみだ」

「そうだろう?」

にぃっ、と夏樹とアマイモンは獰猛な笑みを浮かべた。

殺意ではなく、闘争本能がむき出しになった笑顔だった。

「はぁ。これだから男って――早く帰りたいから、さっさとして」

聖剣さんが呆れた声を出したのが、始まりの合図となった。

「ギャラクシーエクスまもんまもんフォオーエバー河童勇者エクセレントチョップ!」

「――アマイモンパンチ」

「だっさ!」

夏樹の拳とアマイモンの拳が激突した。

両者の拳から腕にかけて衝撃でひしゃげる。だが、すぐに夏樹はヒールをかけ、アマイモンは再生させ、次の拳を放った。

夏樹の方が早かった。

「まんたまんたキーック!」

夏樹の拳がアマイモンの左頬を捉える。

頬骨を砕き、そのまま地面に叩きつけた。

――が、アマイモンは地面に頭を激突させながら、つま先を夏樹の鳩尾に入れた。

「げほっ、おえ」

夏樹の口から血が溢れる。

内臓がやられた。

が、問題ない。

夏樹には再生能力はないが、オートでヒールをかけ続ける力くらいはある。

手動ではなく、自動に切り替えた。

すぐに身体が癒える。

「ぺっ、あー、うがいしたい。血って嫌いなんだよねぇ。俺は絶対吸血鬼にはなれないなぁ」

「同感だ」

何事もなかったようにアマイモンは立ち上がり、服についた土埃を払う。

「久方ぶりに痛みを感じた。心地いものだ」

「も、もしかしてそっちの趣味の方ですか? 僕にはそんな高度な趣味はないんですけどぉ」

「ふふ、愉快な勘違いをする。だが、君のパソコンにはなかなか面白い趣味嗜好が入っていると聞いている」

「なんで知ってんの!?」

「無論。強敵となる者の調査をすることからが戦いだ」

「思春期の少年のパソコンの中身まで調べる必要はないからね!」

「わかっている。私が勝っても、君が美脚が好きなことや、スレンダーが好きなことは黙っていよう」

「言ってる! 今、今、この瞬間口にしているよ!? やめて、俺のプライバシーを侵害しまくらないで!」

「そうなのか? しかし、君の住む町内では有名だった」

「待って、待って、おかしい。調べたのって俺のパソコンの中身だよね? まさか聞き取り調査でパソコンの中身がわかったとでもいうの!?」

「そうだが?」

「そうだが!?」

「君の母親が井戸端会議で漏らしていた」

「お母さああああああああああああああああああああん!?」

「他にも、君の近隣に住む前島くんは義理がつけばなんでも好みであるとも聞いた」

「誰だよ前島くんって! なかなかなお手前してるな、おい!」

「もっと言うと、近所では小梅・ルシファーが許嫁であり、青山銀子は恋人であり、サタンが由良春子の再婚相手であり、リヴァイアサンがお兄ちゃん大好きな妹として認識されている」

「大事件だ!」

夏樹は、アマイモンの情報収集能力と、近所の誤ったネットワークに戦慄を覚え冷たい汗を流した。