作品タイトル不明
62「殺っちゃうんじゃね?」②
「じゃあ、いってきます」
「おう! 負けたら許さんからな!」
「頑張ってくださいっす!」
夏樹は小梅と銀子のエールを受けて、足を進めた。
まだ魔族たちは人間と戦っている。
新たな神々についた天使や魔族たちとも戦っていることを感じ取ることができる。
だが、心配はしていない。
魔族たちの方が強い。
「――由良夏樹」
「アマイモン」
幼い少年の姿をした高位魔族アマイモンが夏樹を待っていた。
「ぜっくんを殺させない……なんてしらけたことは言わないよな?」
「言わぬ。私が絶望の神を倒したが、留めは刺さなかった。結果として、松島明日香が絶望の神を身体を乗っ取ってしまった」
「乗っ取られた方が悪いのさ」
「そう思う。だが、責任も感じている。君が許せば、私が松島明日香を葬ろう。親しい仲であると聞いている。戦いづらかろう」
「親しくなんてありましぇーん!」
「……そうなのか? だが、松島明日香の言い分では」
「まったくもって親しくないからぁ! やーめーてー!」
どうやらアマイモンは明日香の戯言を信じてしまったようだ。
遠くから「アマイモン様はピュアなんだよ!」と聞こえて気がするが、スルーしておく。
「そんなわけで、俺がちゃんと殺すから安心していいよ」
「人が人を殺すには抵抗があると聞いていたが?」
「――あれは人じゃないだろ」
「……なるほど。そう割り切ることで心を強くするのだな。勇者に選ばれただけはある」
「この魔族、夏樹のことを勘違いしてない?」
「してるねぇ! 良い方向にしているから放っておこう!」
聖剣さんまでが変な顔をしてしまう。
アマイモンの目に、自分がどのように写っているのか気にはなるが、それはまたの機会でいい。
「ちょっと待っててね。あれを殺して、あんたもさくっと殺してあげるから」
「――っ、そうか。戦ってくれるのか」
「戦うさ。俺はあんたと戦うためだけに、力をずっと温存してきたんだ」
「なんて嬉しいことを言ってくれる!」
アマイモンの感情がむき出しになった顔を見たのは初めてかもしれない。
「めっちゃいい顔するじゃん」
「――するとも。私の力を全力でぶつけることができる相手がいる。しかも、ちゃんと殺すつもりで戦ってくれるのだ。サタンもサマエルも、今が良いようだからな、私は相手をしてもらえない」
「そこで無理やり襲いかからないのがアマイモンのいいところだね」
「よせ、私は褒められなれていない。照れてしまう」
「ぜっくん側にいなけりゃ友達になれたのに」
「友になったら殺し合えないだろう?」
「そう?」
「俺は友達が本当に殺し合いしたかったら付き合うぜ」
「素晴らしい男気だ。君のような友がいれば、私はもっと早くに満足していたかもしれないな。いや、忘れてくれ」
アマイモンの言葉に、夏樹も少し思うことはあったが、あえてそのままにした。
今は、明日香が先だ。
「じゃあ、また後でね」
「ああ、また後で」
アマイモンとすれ違い、夏樹は足を進める。
「――夏樹! 来てくれたんだね!」
松島明日香は夏樹を待っていた。
ぜっくんの身体を奪いながら、外見は明日香のままだった。
「待ってたんだよ! 杏なんてどうでもいいから、私が――」
言葉の途中ではあったが、夏樹は無言で聖剣を振り下ろした。
「――あ」