作品タイトル不明
間話「まもんまもん体操とビールじゃね?」
――青森、某所。
「は? まもんまもん体操だって?」
一日の仕事を終えた風呂上がりのさまたんは、部下であり友人であり家族でもあるマモンから打ち明けられた「まもんまもん体操」という言葉に怪訝な顔をしていた。
「まもん。子供たちとまもんまもんしながら歌って踊る体操があってもいいと思いまもんまもん」
「思わねーから」
「――まもん!?」
「そんな馬鹿な、みたいな顔をされてもこっちが困るんだけどな! 子供たちのどんな悪影響を与えるつもりだよ! さすがに止めるよ!」
「ま、まもん」
「しかし、じゃねーから!」
さまたんは、ビールと冷やしたグラスを冷蔵庫から出すと、丸テーブルの前に腰を下ろす。
キンキンに冷えたグラスに、同じくキンキンに冷えたビールを注ぐ。
グラスを傾け、最初はそっと炭酸を逃さないように、いいところまできたら泡を作るように力強く。
綺麗に七対三に注ぐことができたさまたんは満足して笑みが溢れた。
「――いただきます!」
そっと口につけてビールを吸う。
麦の味と香りが口の中に広がり、至福の瞬間が訪れる。
ごっごっごっ、と舌はもちろんだが喉でも味わう。
「かーっ、この為に仕事してるなぁ!」
「……もう飲み方がおっさんでまもんまもん。いえ、うまそうではありますが……まもんまもんと御相伴しましょう」
さまたんの飲みっぷりに、ごくり、と喉を鳴らしたマモンも冷蔵庫からビールとグラスを取り出し、いそいそと準備をする。
マモンは八対二で注ぐことを好んでいた。
「――では、いただきまもんまもん!」
ごくん、ごくん、ごくんっ。
腰に手を当てて立ったまま、ひとくちが大きいマモンはあっという間に飲み干してしまった。
「――つぁー、まもんまもん! このためにまもんまもんしてる!」
喉と心を潤したマモンは、とあることに気づいた。
「――っ、まもんまもん! 畑潰してビール作りませんか?」
「お前、ぶっ殺すぞ!」
「冗談でまもんまもん。せめて空いている土地で作りましょう! まもんまもんビールを!」
「なーんでお前が全力で主張してくるんだよ! というか、免許とか無理だろ! 戸籍はあるけど、その辺はいろいろ面倒なんだぞ! 私が各方面にお願いしてどれだけ頑張って車の免許取ったと思ってんだ!」
「言いたいことはわかります。なので、周平を社長にしましょう! まもんまもん!」
「急だな!」
アルバイトの周平は、元暴走族の総長だったが、今は頑張って働くいい子だ。
家庭環境が悪かったこともあり非行に走ったが、今では近所の人たちにも可愛がられている。
「周平をそろそろアルバイトから正式にまもんまもんと雇いたいとおっしゃっていたのはさまたんではありまもんまもん! そこで!」
「そこで、じゃないよ! お前の野望に周平を巻き込むな! ――いや、ビールとか作りたいけどさ!」
さまたんは昔、ベルギーあたりでビールを作って生活していた過去もある。
「いっそ、企業を買ってしまいまもんまもん。俺とさまたんの資産なら余裕でしょう!」
「他の神や魔族が我慢しているんだから、お前も我慢しろ!」
「まもんまもん……仕方がありません。ビールに関してはあきらめまもんまもん。それで、まもんまもん体操についてですが」
「その話まだ続けるのかよ!」
「続けまもんまもん! 何も、俺が勝手に体操をしたいと考えたわけではないでまもんまもん!」
「――まさか」
「そうです。案件でまもんまもん!」
「断れ!」
――残念ながら、まもんまもん体操はマモンが泣く泣く案件を断り叶わなかった。
「ですが、第二、第三のまもんまもん体操がいずれさまたん様の前に現れるでまもんまもん! その時、さまたん様がどう出るのか楽しみでまもんまもん!」
「魔王みたいに言うな!」
――やっぱり青森は平和だった。