軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53「勇者の帰還じゃね」②

「……なんてことだ……どうすれば、二度も異世界から一時間も経たずに帰ってこられるんだよ! なぜ、戻ってこられるんだ! 由良ぁ、夏樹ぃ!」

門の神が叫ぶ。

今まで誰一人として、夏樹のように平然な顔をして戻ってこられる者はいなかった。

むしろ、異世界に永住するか、向こうで死ぬか。まず、戻ろうとする者はいない。

戻ろうとして戻れるものではないのだ。

門の神は、地球に生まれた新たな神々であるが、特性上世界を跨ぐことができる。

ゴッドが管理する世界であろうと、他の誰かが管理する世界であろうと、お構いなく。

神ではない、人間でしかない、由良夏樹にそんなことができるはずがない。

否。あってはいけないのだ。

「なら……三度目はない! 絶対に戻ってこられない、遠い彼方へ」

「――メリーさん流剣術、今あなたの後ろにいるの斬り」

「もうわかってんだよ! お前のやることは!」

門の神は、夏樹が真面目に戦っていないことを理解している。

ふざけているのか、余裕があるのか、そのどちらでもある可能性はあるが、わざわざ背後から声を出しているのは、実に愚かだった。

「言ったはずだ、俺もそこそこ実力を持っている……と?」

背を振り返ると、そこに夏樹はいなかった。

愛くるしいアザラシが「きゅ?」と鳴いている。

「え?」

「だから言っただろ。あなたの後ろにいるのって。俺はいつでもお前の背後にいるんだよ。――秘技、まんた斬り!」

聖剣が振り下ろされ鮮血が舞う。

ギリギリのところで致命傷は避けたが、十分なダメージを受けてしまった。

いくら再生できるとは言え、聖剣の一撃は確実にダメージを門の神に蓄積させる。

「……真面目に戦う気はないってことか」

「真面目に戦って欲しいのか?」

「……舐めるな! 神を相手に、その余裕がいつまで続く!」

「――いいんだな、真面目に戦って?」

いつの間にか、アザラシを脇に抱えた夏樹が眼前に立っていた。

天に届くほど溢れる魔力を渦巻き、瞳が青く輝いている。

「……お前、ありえねえだろ」

門の神の口から出たのは、目の前の少年を認めたくないという声だった。

不意に気づく、夏樹がまたがらずに背に立っていた白馬の上にひとりの少女がいた。

彼女の近くには二匹のマンタが宙を泳いでいる。

少女に見覚えのある門の神は、全てを察した。

「――てめぇ……てめえがこのガキに力を与えたな! こんな規格外が自然に生まれるわけがない!」

「ざーんねーん。なっちゃんは、誰にも干渉されてねーよー」

少女は舌を出した。

「話は終わりだな。俺は、まんたさんにお前を殺して欲しいと頼まれた。運命の出会いかと思ったよ。俺もお前をぶっ殺したかったからな!」

門の神の右腕が、付け根から斬り飛ばされて飛んだ。

「――な」

見えなかった。

注意を逸らしていないのに、なにをされたのか見えなかった。

斬られたのはわかる。

由良夏樹は聖剣を振るい斬ることが最大にして最高の武器なのだ。

――だが、わかっていながら、見えなかった。

「再生させる暇は与えない」

左腕が飛んだ。

やはり見えない。

右足が無くなり、地面に倒れた。

なにをされたのかまるで見えなかった。

ただ、斬られたことだけがわかる。

混乱と恐怖を覚え、再生ができない。

ならば、残った力をすべて使い、夏樹をどこかに飛ばしてしまおうと決めた。

――が、できなかった。

「……俺の術式を斬っただと?」

「あんたはタメが大きすぎだ。二度見れば対策だってできる、勇者舐めんな」

「由良ぁ、夏樹ぃ!」

門の神が叫ぶ。

どこまでも滅茶苦茶な人間に、神であることを否定された気がした。

混乱と恐怖が消えて、怒りに染まる。

「上等だ! 人間が、神に勝てると思うな! 俺は、今まで俺が送り込んだ転生者たちと力を全て使うことができる! 見ろ、この力を! お前のおかげで、今、力に目覚めた! 俺は、神として次のステージに――」

神として覚醒を果たした門の神が、新たな力を使おうとして、

「あ、そういのいいんで」

なにもすることができず、首を斬り落とされた。