作品タイトル不明
40「ついに覚醒じゃね!?」①
キャメロン・ブレスコットは、ブレイバーズ王国国王サイラス・ブレスコットの正妻だ。
しかし、幼い頃から王妃になることが決まっていたキャメロンは、傍若無人であり、弱きを虐げ、享楽に身を投じていた。
その結果、息子ルーサーを産むが、夫である王の血を引いていなかった。
キャメロンはその事実を隠し、変わらぬ言動を続けた。
彼女にとって、王家の血を引くではなく、自分の血を引いた子が次の王になればいいと思っていたのだ。
――だが、すべて夫である王にはバレていた。
その結果、想像を絶する苦痛が待っていた。
今までキャメロンが虐げた人々の恨みがすべて凝縮されたような苦しみを味わうことになった。
自業自得である。
同情する者は誰一人としていない。
いない、はずだった。
しかし、変わり果てた改造を受けたキャメロンを見て、誰もが思う。
――ここまでするなら殺してあげればいいのに、と。
■
祐介と対峙する形で、異形となったキャメロン・ブレスコットがいた。
煌びやかなドレスこそ着ているが、背中から六本の腕が飛び出ている。
どれも、違う腕だった。
スカートからはみ出すのは、やはり人間のものではない四本の足がある。
「……生きているんだね」
キャメロンは、何かしらの術を施され異形にされていてもなお生きていた。
よだれを垂らし、涙を流しながら、意識だけははっきりあるようだ。
「私の最高傑作だ! 捕らえていた、エルフ、ダークエルフ、獣人、オーガ、オーク、様々な魔族の肉体をキャメロンに与えた!」
「……なるほど。つまり国王さんは人外っ子が好きってことか」
「違うだろ!」
この吐き気を催す空気に耐えられず祐介が頑張ってギャグに走ろうとしたが、ソーニャの蹴りが背中に入った。
「いくらなんでも……やっていいこととわるいことがあるだろ! 人間は、そこまでやるのか!」
ソーニャの言葉は、魔族ならば誰もが思うことだった。
同時に、祐介たちも同じだ。
ここまでする必要があったのか、と。
しかし、サイラスはまるで自慢するように肯定した。
「無論。ここまでする必要はあった」
「――な」
「魔族にはわかるまい。人間がどれほど愚かで矮小なことか。生き汚く、他人を蹴落としてでも自分さえ良ければいい、それが人間だ。時間にも力にも余裕がある魔族には、どうやってもこの気持ちはわからんよ」
「僕にもわからないね」
祐介が前に出る。
「人間に関しては同感だよ。いなくなってくれても何の問題もない。だけどね、お前たちの事情に魔族さんを巻き込むな! 魔族さんの身体を与えたって、その腕や足の持ち主をどうしたんだ!」
「なにを言う、勇者よ。殺したに決まっているだろう?」
「――はい、死刑決定」
祐介から魔力が吹き荒れる。
その魔力は、夏樹に匹敵するほどだった。
「千手さんと東雲さんはラブコメっているのに、僕だけがこんな狂った王様を相手にするとか、ダークサイドを通り越して光の勇者になりそう!」
「真面目にやれよ! ちょっとはいいとこ見せてくれよ!」
「ぐぺっ」
再びソーニャに蹴り飛ばされる。
「ああ、もう! あとでちゃんと言おうと思ったのに、こんなところでこんな状況で言うのは嫌だけど――」
ソーニャは祐介の胸ぐらを掴み、顔を引き寄せる。
「お前はいい奴だ。人間だけど、面白いし、一緒にいて飽きない。お前の子供なら産んでもいいって思ってる」
「――――ほえ?」
「今ここで言うと、打算があるようで嫌だったけど! とっととこいつらぶっ飛ばして、子作りしようぜ」
――どんっ。
祐介の魔力が爆発した。
ブレイバーズ王国兵を、サイラスを、キャメロンを、すべて魔力の衝撃波で吹き飛ばした。
「……この勝利を、君に捧げます」
「おう!」
男前に笑う、ソーニャから離れ祐介は歩んでいく。
彼が一歩踏み出す度に、地面から草花が生える。
「サイラス・ブレスコット。改めて、名乗るよ。僕は――大地の勇者、佐渡祐介。魔族さんたちの守護聖人だ!」
――大地の勇者が覚醒した。