軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37「婚約者と一緒に戦うんじゃね?」①

最初に攻撃を仕掛けたのは、茨木童子だった。

「八つ裂きにして、その辺にいるモンスターの餌にしてあげる」

茨木童子の爪は頑丈ながら鋭利な刃物と化す。

数多の敵を裂いてきた彼女の鉤爪は、対応できず棒立ちだった明日香の頭部から下腹部まで一切り四筋を残す。

「いっ……たぁ!」

血を吹き出し、可愛らしい顔が見るも無惨となる。

だが、すぐに再生されてしまう。

「乙女の顔に――」

「黙れ」

常人ならば致命傷を負いながら、再生できるというだけで構うことなく軽口を叩こうとする明日香の胸に、茨木童子の腕が貫いた。

「……以前、戦ったときにも思ったけれど、戦いに関してはまるで素人ね。余裕があるからあえて攻撃を受けているのだと思っていたけど、動体視力がまるで私たちを追えてないわ。というか、あなた――どうせ再生するから攻撃されてもいいって思っているでしょう」

「うふふふふふ」

明日香が笑う。

口周りを血で真っ赤に濡らしながら、楽しそうに笑う。

「私って、痛いことに鈍いの」

「あ、そ」

「でもね、痛いは痛いんだよ?」

「痛覚がなければよかったのにね」

茨木童子は、明日香が痛みに鈍いなどどうでもいい。

「ところで」

「え?」

「これなんだと思う?」

「あれ? え? うそ?」

茨木童子が明日香の胸から腕を引き抜くと、血まみれの手に何かを握っていた。

「化け物でも心臓を奪われたらどうなるのかしら」

「あ、ああ、私の、しんぞ、う?」

明日香は、空洞となった胸と茨木童子が持つ心臓に繰り返し視線を移す。

心臓の動きは止まっている。

明日香はおもむろに手を伸ばした。

「わた、し、の心臓……かえし、て」

涙を流した明日香に、茨木童子は無感情に応じた。

「嫌よ」

ぐしゃり、と茨木童子は明日香の心臓を握りつぶした。

「ひひひっ、なーんちゃって!」

泣き顔から一変し、満々の笑みを浮かべた明日香は唾を飛ばし叫んだ。

「どかーん!」

次の瞬間、明日香の心臓が爆発し、茨城童子が爆炎に包まれた。

「あははははははは! ざまーみろー! 茨木童子さんって、今まで弱い相手としか戦ったことないでしょう? いつだって余裕ぶって! 私、大物でーすって感じがうざーい! どう? どう? まともに戦いができない女の子に、殺したと思って内心ドヤ顔していたのに、逆にやられちゃった感想はー? ねえねえ、聞かせてよ! ていうか、死んじゃっ……あれ?」

爆笑していた明日香だったが、硬直する。

爆炎が晴れると、大量の符に守られて無傷な茨木童子がいた。

「あかんよ。簡単に貴重な前衛を傷つけさせるわけがないやろ?」

符と符が線を引き、結界を作っていた。

爆炎は茨木童子を傷つけることなく、東雲の結界によって阻まれていたのだ。

代わりとばかりに、結界が音を立てて砕け、符が燃え散る。

「卑怯なんて言わんといてね」

「そっか。しののんはサポートで鬼さんが攻撃なんだね。ふむふむ。よし! わかった! じゃあ、本気出そっと!」

――松島明日香の雰囲気ががらりと変わる。

「――っ、なんや、この魔力は」

今までの明日香は、カラカラと笑う明るい少女だった。

しかし、今は一変し、じとっとした嫌な笑みを浮かべている。

心なしか、肌が青白くなった気がした。

「――おいで」

明日香の短い言葉が響くと同時に、彼女の影から、穴の空いた胸から、口から、人型の肉塊が這い出てきた。