作品タイトル不明
9「さすがにそれはなくね?」②
「二度も同じわざを喰らうわけねえだろぉおおおおおおおおおおおおお!」
「二度も抵抗させるわけがないだろう?」
夏樹に身体を斬り刻まれながら、門の神は絶対に手を離さなかった。
「お前の弱点は強すぎることだ。慢心していなくても、俺たちを下に見ている」
「実際、俺よりも弱いだろ!」
「そこだよ」
「どこだよ!」
「お前は傲慢なんだよ、由良夏樹!」
血反吐を吐き出しながら、門の神が笑う。
夏樹は聖剣が使えないならばと魔剣を引き抜き門の神の首に突き立てた。
血が舞う。
「普通の神なら、死んで、いただろう、な!」
吐血する門の神。
夏樹の顔が血で真っ赤になった。
「気持ち悪いんだよ!」
首を千切る勢いで剣を動かすも、薄皮一枚で門の神の首はつながったままだ。
赤黒い血を流しながら、ゆっくり再生していく。
「お前は危険だ、由良夏樹。言動こそ、阿呆なガキだが、その力は無視できない」
「失礼すぎるだろ! 俺のどこが阿呆だ!」
門の中に、夏樹の身体がゆっくり沈んでいく。
「――夏樹ぃ!」
「小梅ちゃん、来るな!」
「じゃが!」
「駄目だ!」
助けに入ろうと翼を広げた小梅を夏樹は声を張って止める。
「良い判断だ。サタンの娘が門の中に入ったら別々に飛ばしてやろうと思ったんだがな」
「性格悪すぎだろ! まあいいさ。一緒に異世界に行って決着つけようぜ」
面倒臭い神をこの場から引き摺り下ろすことができれば、残された小梅たちの負担が減るだろう。
「く、はっ」
しかし、門の神は笑った。
夏樹を馬鹿にするように笑った。
腹が立ったので、短剣をアイテムボックスから引き抜くと門の神の目に突き立てる。
「――づっ、てめぇ……無茶苦茶だな!」
「なぜか知らないけど、昔からよく言われるよ!」
「自覚なしなのがタチが悪いな!」
「うるせえ、死ね!」
短剣を奥深くに押し込もうとするが、やはり硬い。
抵抗力があるようで、なかなか面倒だ。
「俺はお前ほど強くない。認めよう。お前みたいな規格外じゃない」
「あんたが弱いことはわかってるさ!」
「……まあいいよ。だけど、俺は門の神だ。異世界召喚、転生、転移を司る。そして、チャンスを与える幸福の神でもある」
「まどろっこしいな、で、なんだよ!」
「つまり、俺はお前と一緒に門の中に入っても、関係ないのさ。俺は、俺の意思のままお前だけを別の世界に飛ばせる」
「……うわー、引くわー。チートすぎて引くわー」
短剣を引き抜き、顎に突き立てる。
門の神の下顎と上顎が嫌な音を立てて閉じた。
「もういいや、不愉快だ。お前は喋るな。――三度目の異世界、上等だ。問答無用で世界を破壊して戻ってきてやる。楽しみにしてろ」
門の中に沈んでいく夏樹は、親指を立てて、下に向けた。
「いくら俺を異世界に飛ばそうとも、第二、第三のなっちゃんが現れるだろう。くははは! ふはははははははは!」
勇者なのに魔王の如く高笑いをしながら、夏樹は再び別世界に飛ばされてしまうのだった。